知りたくない 2 ページ2
「月島軍曹殿。ロシア語でお礼を伝えるときはなんというんですか？」
「Спасибо、だ」
私が覚えやすいように月島軍曹はゆっくりと発音してくれた。私はそれを聞いて、女性の方へと向き直ると、ぺこりとお辞儀をして「スパシーバ」と伝えた。
女性はその様子を見て驚いた表情をしたが、眉尻を下げ、きゅっと口元を引き結ぶ。
その様子に首を傾げていると、次には満面の笑みで笑いかけてくれ、ぎゅっと私の手を握った。その手はとても温かくて、優しく包み込んでくれるような包容力を感じた。
──────A。
記憶の中の母が、優しく微笑む。
…もしも、母が今も普通に生きていたら。こんな風に、優しく微笑んでくれたのかもしれない。そんな考えが脳裏に浮かび、胸が苦しくなる。
「……A？どうした」
「いえ……なんでもないです」
不思議そうな表情をする鯉登少尉殿に、私は慌てて笑顔を作った。何か言いたげな顔をしていたが、「ならいいが……」と呟くと、すぐに視線を外してしまった。
「……そうだ。まだ朝早いから、もう少し寝ていろ。朝食ができたら起こすから、それまで休んでいるといい」
「いいえ。これ以上はご迷惑をおかけできません」
「病人は大人しくしてろ」
「でも……」
食い下がろうとする私を見て、鯉登少尉殿はため息をつくと、私の肩を押してベットへ戻した。
そして布団をかぶせて、ぽんぽんと頭を撫で「いいから寝ていろ」と言う。
驚いて彼を見ると、優しい眼差しとぶつかった。
「……わ、わかりました」
子供扱いされているみたいで、恥ずかしさがあったが、それ以上に彼の優しさに触れられた気がして、自然と頬が緩んだ。それを見られるのが嫌で、口元まですっぽりと毛布を被って隠す。
そんな私を見て、鯉登少尉殿はどう思ったのだろう。ハッとした後、私の頭を撫でていた手を引っ込めると、ぷいっとそっぽを向いてしまった。
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塩わさび(プロフ) - くろわっさんさん» コメントありがとうございます。毎日だなんてとても嬉しいです☺これからも宜しくお願いいたします！ (6月18日 21時) (
レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
塩わさび(プロフ) - あもさん» 何を企んでいるんでしょう…😏😏 (6月18日 21時) (レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
くろわっさん - 最高です😭😭😭💖毎日のように読ませていただいております！！これからも楽しみにしています🙇🏻♀️💖💖 (6月7日 0時) (レス) @page43 id: 046a741a21 (このIDを非表示/違反報告)
あも(プロフ) - 尾形さん一体何を・・・。てかいつの間にか尾形さんと鯉登さんとの三角関係に！！？？ (6月6日 22時) (レス) @page43 id: 656bb5ebbb (このIDを非表示/違反報告)
塩わさび(プロフ) - あもさん» ですね☺共感していただけて嬉しいです💕 (6月6日 12時) (レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：塩わさび | 作成日時：2023年5月14日 23時
