死神さんの気まぐれ短編集【２】 (ページ31)

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【歌えない天使】《死神視点》５ページ31

そんなに不安そうにするな

仕方ねぇ、元天使長の俺様も一緒に歌ってやるか

俺様と歌えること、喜ばしく思えよ

そう思いAの歌声に合わせて俺も歌い始める

13｢〜〜〜♪｣

｢えっ｣

俺が歌い始めるとAの声が止まった

13｢ん？あれ、歌詞間違ってたか？｣

｢いや･･･間違ってないですけど｣

13｢だよな。ほら、続き続き｣

早く歌えと促すと続きを歌いはじめた

その歌声に合わせて俺も歌う

俺様は別に歌が下手なわけじゃねぇ

気が向かなくて歌わなかったってのが正しい

この歌も何千回と歌って飽き飽きしてたんだが、たまには歌うのも悪くねーな

この歌い方嫌だけど

もっと好きに歌いてぇ

でも、コイツの歌と合わせるならこっちの歌い方の方が合うだろ？

そんなことを考えていたら歌い終わっていた

13｢意外と歌えるもんだな。でもこの歌い方全然気に入らねぇ｣

｢･･･すごく綺麗でした｣

13｢そーか？やっぱ俺様天才だからな｣

得意げに笑うとAの表情が少し和らいだ気がする

少しは仲良くなれたか？

13｢俺様お前の今の歌声好きだけど、もっと完璧に歌いたいってんなら、そうだな。あー･･･あれだ。『〜〜♪』の部分。もう少し伸ばしてみるといいかもな。〜〜♪ほら、お前もやってみろ｣

｢あっ･･･、〜〜♪？｣

俺が歌って見せると続けてAも同じように歌って見せる

なかなか素質はある

13｢そーそー、いい感じだな。俺様でよければ練習付き合ってやるよ。気が向いたらな｣

そう言って立ち上がり来た道を戻ろうとすると呼び止められた

｢あ、あの！ありがとうございました！｣

13｢たいしたことしてねーよ。あ、そーいや名前言ってなかったような･･･｣

そう言えば１週間前会った時名前言ってなかったなと思い出し振り返ってAの顔を見る

13｢俺様は13(サーティーン)。死神だ｣

じゃあなと手を上げて挨拶すると今度こそ来た道を引き返す

これでちょっとは気が楽になればいいんだけどな

アイツ、歌苦手って言ってたが好きではあるみたいだから磨けばもっと綺麗に歌えるようになるはずだ

俺様はそのままでもいいが、可愛い天使のためだ

死神になっちまった俺様だが、面倒見るくらいはいいだろ

13｢っしゃ、アリーナ行くか｣

自分ではわからなかったが、アリーナで俺を見かけたヤツはこう言うんだ

『なんか今日ご機嫌だな』ってな