死神さんの気まぐれ短編集【２】 (ページ24)

今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:3,978 hit

【歌えない天使】６ページ24

？｢まだ居たのか｣

不意に聞こえた聞き覚えのある声に喉が閉まる

ブリキのおもちゃの様にぎこちなく声のする方を振り返ると会いたくなかった黒いローブの彼の姿

｢あ･･･っ｣

？｢もしかして帰れなかったとかか？可哀想にな｣

そう言って固まる私など気にもせずズカズカとこちらに近づいてくる

あの時のオーラは無いが、あの時の感覚が残っていて怖い

彼は近くまで来ると私の隣にあぐらをかいて頬杖をつく

｢･･･え｣

つい漏れた声に彼がこちらを向く

？｢どうした？歌わねーのか？｣

｢･･･歌え、ないです｣

？｢歌えない？さっきまで歌ってたろ？｣

｢き、聴いてたんですか？｣

？｢バッチリ｣

嘘だ

あんなお粗末な歌、聴かせられるようなものじゃない

なのに聴かれた、しかもこの人に

？｢歌えないってどうしたんだ？なんか理由あんだろ｣

｢･･･歌うの、苦手なんです｣

デリカシー無く問いかけてくる彼

しかし彼になら言ってもいいと思えた

こんなに怖がっている相手なのに、不思議

｢だから、こうやって毎日･･･練習を｣

？｢なるほどなー。でも練習する程下手か？俺様好きだぜ、お前の歌声｣

｢えっ？｣

言われたことない言葉に息が止まる

？｢別にいいんじゃねーの？好きに歌えば｣

｢･･･それじゃあダメなんです。天使は、完璧じゃないと｣

？｢知ってる。ダリぃよなー。好きにさせろってな｣

全部知っているという彼の口ぶりに胸のあたりがモヤモヤする

｢･･･あの、貴方はいったいナニモn｢なぁ、もう１回歌ってみろよ｣はい？｣

私の疑問にわざと被せる様に歌をリクエストしてくる

それ以上は聞くなと言っているようだった

？｢俺様もう１回聴きたい｣

｢人に聴かせられるようなものでは･･･｣

？｢言っただろ、俺様はお前の歌声が好きだって。な？｣

そう押されると断りにくい

皆と歌うことはあっても１人で歌って誰かに聴かせるのはやったことがない

私にできるのだろうか

そう思うと同時に、私の歌声が好きと言ってくれた彼に聴かせてあげたいという気持ちも湧く

本当に不思議だ

私は恐る恐る口を開く

｢っ･･･〜〜〜♪｣

裏返ってはいないか

変に力が入っていないかと心配しつつも歌を続ける