【wrwrd】先生。【osmn】 (ページ6)

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5話ページ6

何かしらの資料を持ったオスマン先生が教室の戸から半身だけ覗いて、ゾムくんを呼んでいた。思ってもみなかった先生の姿にドキリと胸が高鳴るのを感じた。ぱっと顔を伏せてそれを誤魔化す。

「えっ今？」
「今〜はよして〜」

いつも生徒にもさん付けをするオスマン先生がゾムくんのことを呼び捨てにして、くだけた話し方をしているのは新鮮だ。
ゾムくんは頭を掻いて乱暴に席から立ち上がると、「ごめん！」と私に言って教室を出ていった。そこから昼休みギリギリまでゾムくんは戻ってこなくて、少し不機嫌な顔をしていたので、言葉の続きは聞けなかった。

SHRが終わり放課後になって、ゾムくんは自分の荷物を引っ掴んで直ぐに教室を出ていってしまった。私には何か急ぎの用事があるように感じた。
私も帰ろうかと荷物を手に取る。しかし、用事を見つけて私は図書室へ向かうことにした。

今日習った夢十夜は教科書には第一夜しか記載されていない。ネットで調べて全部は読んだのだが、昔から紙媒体で読むのが好きなので、ここへ来た。図書室は落ち着く。本の匂いと静かな空間が私のしょうに合っている。いつも座る一番端の戸の近くの席に勉強道具を置き、座る。手にはあまり借りられた様子のない小説。お分かりの通りタイトルには「夢十夜」と書かれている。
ペラリ、と少し黄ばんだような薄っぺらい紙をめくる。小さな文字がずらと並んでいるのを見て少し口角が上がる。この瞬間が好きなのだ。目の前に文字で埋め尽くされたページが広がるのが。
スルスルと読み進めていく。物語に熱中していた私は背後の気配に気づかなかった。

「勉強熱心なんですね」

大袈裟だと批判されても文句が言えないほど肩が跳ね上がった。あまりにも聞き慣れてしまった声に体の熱が上がる。

「驚かせましたね、すみません。明日委員会があるのでここで準備をしていたら貴女が来まして。なかなかここで生徒と会うことはないのでつい、声を。」

ふわりと笑う先生の声は音としては聞き取れたが言葉としては3割も聞き取れなかった。返事替わりに笑うことも出来ないので、相当ひきつった顔をしているだろう。先生もそんな私を見て不安そうな顔をしている。

「……Aさん？」

そこで我慢が出来なくなって私は立ち上がり、急いで物を纏めて「失礼します」とだけ言い残して図書室を出た。

あんなに渇望した、私の名前を呼ぶ先生の口の形が目の前にあった。馬鹿になった心臓が治まらない。