35.言い訳 ページ35
・
「え、なんで謝るの！てか！なんで泣くの。」
気付けば目の前の有岡くんは凄く慌てた顔しておろおろしてて
そんな有岡くんになんだか可笑しくなってしまう。
「え、今度は笑ってる・・」
「うん、ごめん。」
「や、だから謝らないでよ。」
「うん、だね。」
困った顔をして私を見てる有岡くんもやっぱり可愛くて
もっともっと色んな有岡くんを見てみたいなぁって思うけど
多分きっと、どんな有岡くんも可愛いんだろうなって思ったら
心がぽわんと暖かくなってなんだか嬉しくなった。
「絵本を、探してるんだけど。」
ぽつんとそう言った有岡くんが指でこめかみをぽりぽりっと掻いたかと思ったら
「やっぱり、それは単なる言い訳っつうか・・・」
言いにくそうに言葉を濁しながらちらりと私を見上げた。
「言い訳？」
「うん・・・前にAが言ってた恐竜の絵本が見たいなと思ったのもホントなんだけど。」
「あ、あのパン屋さんの！有岡くんでも読める本ね！」
「いや、本くらい読めるわ(笑)」
２人で一緒に笑うとやっぱり凄く楽しくて
さっきまで悩んでたのがなんだか嘘みたいに感じてしまう。
「会いたかったんだ。」
突然真っ直ぐに私を見た有岡くんがいつもよりずっと真面目な顔をしてるから
急に心臓がドキンと音を立てて呼吸の仕方も忘れてしまいそう。
「・・・私、に？」
「A以外誰がいるの(笑)」
「駅で、出会ってるよ？」
「そうだけど・・・Aは会いたくなかった？」
ちょっとだけ困ったような、照れたような顔で笑う有岡くんは
なんだかちょっとだけ迷子の仔犬みたいに見えて
「・・・お手」
ぽつんと小さく言ってカウンターの上に手を差し出したら
真っ直ぐに私を見たままの有岡くんが
「いつまでも仔犬じゃねーからな？」
にやりと笑ってぎゅっと私の手を握った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 408人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
えこる(プロフ) - 鈴さん» 鈴さ〜ん♪こんな所まで読んで下さったんですね。ホントにありがとうございますm(_ _)m！ (2020年6月15日 23時) (
レス) id: 7530b26ba1 (このIDを非表示/違反報告)
鈴(プロフ) - 御無沙汰してます、お久しぶりです。あれからずっと読んでました、シリーズ完結まで読んで、やっぱり好きだなぁと。何度も読み返してます。 (2020年6月14日 2時) (レス) id: d50b197e0a (このIDを非表示/違反報告)
えこる(プロフ) - ほっそんさん» ほっそんさん♪最後まで読んで下さってありがとうございましたm(_ _)m最後の『わん。』は、お利口で『待て』して下さってるのかな？？シェフ潤の相手が誰なのか…さっぱり見当つきませんがいつか何か浮かんだ時にはお付き合いお願いします(＾＾)v (2019年7月11日 11時) (レス) id: 010ac42581 (このIDを非表示/違反報告)
えこる(プロフ) - ともさん» ともさん♪最後までお付き合いありがとうございました〜！デキる兄さんたちに可愛がられながらもデキる男に成長（するであろう）有岡くんが書けて私も楽しかったです(＾＾) (2019年7月11日 11時) (レス) id: 010ac42581 (このIDを非表示/違反報告)
えこる(プロフ) - すみれさん» すみれちゃ〜ん♪有岡、意外にデキる子だったでしょ？可愛いだけじゃないんだな〜（ぐふふ）この間はあまり時間が無かったけどまた次回は有岡のアレやコレやも聞いてねww (2019年7月11日 11時) (レス) id: 010ac42581 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：えこる
作成日時：2019年4月20日 7時
