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翼に話すのは簡単だ。
大ちゃんとのことを、
落ち込んでることを、
曝け出してしまったほうが絶対に楽なんだ。
でも、どうしたって言葉は喉を通らず、
笑ってしまうのはなんでだろう。
私を探していたらしい翼にゴメン、と謝って
机の中から教科書を探した。
あれ、何を探してるんだっけ。
次は何の授業なんだっけ。
何処に行かなきゃいけないんだっけ。
まるで夢の中にいるみたいに、
いろんな出来事や、
やり方が分からなくなってきて、
必死で意識を保とうと音楽の教科書を掴んだ。
教室を出て行こうとしたら、
入れ違いにクラスの男子が数人入ってきて、
それはいつもあいつと一緒にいる人たちなのに、
その中にあいつはいなかった。
それに気付いた翼が山田君はー？と、
擦れ違いざまに聞いた。
「やま？さっき先輩に連れてかれた。」
翼「えー！連れてかれたってなに！
呼び出し？リンチ？」
「そーじゃなくて。女の先輩。」
翼「女？なに、告られてるとか？」
翼にとっては聞き流せない内容だったようで、
笑っていながらも目は真剣に問い質し始めた。
だけど、男子たちは何だか言いにくそうに、
私にちらりと目線を寄越す。
そんなんじゃないと思うけど、とあさっての方向を見ながら口篭って話す。
流した目線の意味がなんなのか、
その時、私には分からなかった。
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作者名：環
| 作成日時：2018年7月8日 10時
