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学校が終わると私は一目散に家に走って帰った。
部屋のドアを後ろ手で勢いよく閉めて、
呼吸を整えながらゆっくり顔を上げる。
きっちり髪を結んでいたゴムを外す。
髪を伸ばしたことに特に理由はない。
だけど。
いや、だからそんな、
呑気に髪を切らずにいた自分に
どうしようもなく腹が立った。
おかしいのは充分過ぎるほど分かってる。
でも、これをおかしいと言うのなら
私はもっと前から、
夏休み明けからもうずっとおかしい。
悲しいくせに笑ってる。
辛いくせに笑ってる。
泣きたいくせに笑ってる。
本当の気持ちをひたすら隠して無視しようと、
感じないようにしようとした。
有岡の、いい女友達を演じていた。
だけど演じれば演じるほど心が壊れていく。
本当の私と、
演じる私との歪みが大きくなっていく。
本当の気持ちを感じなくなるどころか、
それは強くなって私を苦しめる。
ちっとも救われない。
『髪とかサラサラで綺麗でさ』
『Aみてーだなって思った!』
でもそれは私じゃない。
あなたの気持ちが、私に向くことはない。
なのに、何故喩えるのが私なの?
喩えでも、
深い意味はなくても、
気軽にそんなこと言わないで。
これ以上惨めにさせないで。
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作者名:環 | 作成日時:2018年1月26日 17時