2人の短いお話 その5

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それからと言うもの、俺と藤ヶ谷はそういう関係になってしまって。

シフトが被って一緒に帰ればそのまま俺の部屋か藤ヶ谷の部屋に雪崩れ込んだし、シフトが被らない日でも、大学が終わってからわざわざ待ち合わせして会っていた。


それでも藤ヶ谷と朝まで一緒にいたのは、最初のあの日だけで。


我ながら女々しい、と思う。








「…帰んの」
「んー？うん、明日1限あるしね」
「そっか」








ベランダに出て煙草を吸う後ろ姿にそう話し掛けると、藤ヶ谷は俺の方を見て笑った。








「そんな寂しそうな顔するんだ？」
「…してねえよ」
「ふは、本当可愛いね」








煙を吐き出して携帯灰皿に煙草をしまう。
そしてその後、藤ヶ谷は帰って行く。

もうそれがルーティンみたいなものだった。







「気を付けて、帰れよ」
「あれ、優しいねー？」
「ここら辺、最近、不審者出たみたいだし。…まあお前はそろそろ刺されても良いと思うけど！」
「ひっどい！」






じゃあね、とキスをして藤ヶ谷はあっという間に居なくなってしまう。
煙草と、甘い香水の匂いだけ残して。







「残されるこっちの身にもなれ、っつーの…」







______





その日は夕立が降る、と朝から天気予報で言われていて雨粒が窓を叩く音が聞こえてきた。

ちゃんと傘を持ってきて良かった。
シフトを終え店を出ようとすると、同じ時間に退勤した藤ヶ谷が俺の腕を掴んだ。





「相合傘して帰ろうよー」
「はあ？嫌だわ！それなら濡れて帰った方がマシ」
「北山小さいからだいじょーぶ」






藤ヶ谷が無理やり傘に入ってくるのを阻止したけれど、最終的に観念すると、満足そうに傘を俺の手から奪い取って、ぴったりくっついて歩いた。


…心臓の音、聞こえてねえよな？

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