2人の短いお話 その5

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「え、すごい、ホームページこれじゃん？」
「すげー、結構ちゃんとしてるんだね」
「ミツの友達のバンドどれー？」






会場に向かう電車の中で、2人はライブの事をスマホで検索したようで、俺に画面を見せつけてきた。






「…あー、これ。」
「へえー！トリじゃん！凄い。何の楽器やってんの？」








藤ヶ谷に見つからないようにこっそり帰ろう。
うん、そうしよう。

第一、藤ヶ谷の存在を俺は頑なに隠してきたのだから、今改めてどういう関係か紹介するとなると、高校の同級生としか紹介しようがない。


だって、実は、まさか、






「言えるわけねえよ…」

「え？何？何の楽器？」
「はあ…教えませーん」





男が恋人だなんて、言えるわけない…





_____




そんなわけで3人で訪れたライブ会場は、多くの人で賑わっていた。

色んなバンドが立ち代り出てくるので、会場の出入りは入場する際に渡されるラバーバンドを付けていれば自由らしい。目当てのバンドが出てくると前の方に行ったり、また外に出て行ったりと、会場は混雑していて、身長の小さい俺は若干埋もれてしまう。


最初は遠くから3人で眺めていたけれど、トリが近付くにつれどんどん人が増えてきた。





「ミツ、前行こうよ！お友達出てるんでしょ？」
「う、うん…」





ぐいぐい進んでいく二階堂の後ろを俺と千賀で慌てて着いていく。


って……

く、苦しいーっ！
何で藤ヶ谷見るためにこんな思いしなきゃいけないんだー！





「ミツ大丈夫ーっ？」
「う゛ん゛…っ」
「んしょ…ここおいで」




ライブハウスによく来るという二階堂は飄々としていて、人を避けて俺のスペースを作ってくれた。その腕に囲われるように何とか前の方にありつくと、ちょうどステージ上が暗転した。





「あ、前空いた、行っちゃお！」
「ええ、嘘ぉ…」





暗転したタイミングでちょうど前にいた人たちが居なくなって、なんと最前列の柵前が空いてしまった。

しかも藤ヶ谷のベース側…






ジャン！！





「キャーっ！！！！」

「うおっ」
「すげー人気だね！？」
「うるさ…っ゛」






楽器の音が鳴った瞬間にキャー！という黄色い歓声が後ろから飛んできて、俺らは思わず身を寄せ合った。そしてライトアップされると、少しでも前に近付こうと後ろからギュウギュウに押し潰されそうになる。









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