2人の短いお話 その5

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藤ヶ谷の俺に対する拒絶と、そしてあの涙と。
果たして何を意味しているんだろう。

俺は一人で悩んだけれど、何も解決しなくて。

グループの雰囲気も何だか悪いまま、時間だけが過ぎて行った。






「なーんやお前。まだ相方と喧嘩しとんの？」
「喧嘩、ってか。あっちが勝手に拒否してるだけだし」






その日もいつものように大倉と酒を交わしながら飯を食べていると、俺の浮かない表情を汲んだのか、大倉は藤ヶ谷のことをストレートに聞いてきた。






「小学生の喧嘩みたいやな」
「だから喧嘩してねえって。俺はただ、自分の事嫌ってる奴になんか話し掛けにないだけですー」
「…んー、それが違うんちゃう？」
「ん？何が？」





焼き鳥を一口食べながら、大倉はだから、と言い直してきた。





「嫌いなんじゃなくて、お前の事好きなんちゃう？」
「…は？好き？何で？」
「小学生のガキってそうやん。好きな女の子に素直になれんくて、意地悪しちゃうやん。アレと一緒」
「一緒、って…俺、男ですけど」
「知ってる」






そう言い切って淡々と食べ進める大倉は、決して冗談を言ってるようには見えなかった。


好き？は？藤ヶ谷が？


…いやいや、絶対無い。
だってあんなに俺の事嫌ってるじゃん。

2人っきりになるの避けるし、俺が近付くとどっか行くし。







「…え、まじ？」
「お前の捉え方次第やろ。
第一、お前だって藤ヶ谷くんに嫌われてる、って思って話さないんやからお互い様。あっちだって嫌われてる、って思ってるかも知らんしな。」
「そりゃそうだけど…」





ええ、でもそうなっちゃいます…？
俺のまるで納得していない様子に、大倉は鼻で笑った。




「逆転の発想も大切やろ。まずは相手を観察するとこからやってみ？」






＿＿＿＿






逆転の発想。




「逆転の、発想ねえ…」

「え？何？」
「…んー。何でもない」





大倉と飲んでから数日後。
メンバー全員そろっての収録で、ようやく藤ヶ谷と顔を合わせることになった。





「ミツなんか、顔怖いんですけど」
「てか何かブツブツ言ってない…？」





そんなことを後ろで玉森と二階堂が話しているような気がしたけれど、聞こえないふりをした。

じ、っと俺のちょうど対角線で静かに本を読む藤ヶ谷を観察した。


逆転の発想。
藤ヶ谷が、俺を、好き…？





「いや、なくね…？」





「ほら、なんか喋ってる」
「やっぱりミツ疲れてるんだよ…」
「そっとしておいてあげよう」

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