君のいる世界 ページ35
「ね、こっち来て」
風呂上がり。
髪を乾かせ、と口うるさい恋人のおかげで、ドライヤーをする習慣が付いた俺は、髪を乾かしてリビングに入ると、ソファから声を掛けられた。
「ちゃんと乾かしてきた?」
「お前は俺の母ちゃんかよ」
隣に腰かけようとすると、どうやら俺の座る位置はそこではなかったようで、藤ヶ谷の膝の間にぽんぽん、と誘導された。
大人しくそこに収まると、後ろからすっぽり抱きすくめられる。
「…今日、甘えたなの?」
「んー、そうかも。北山が足りない」
「ふうん。」
何かあった?
そう聞いてしまえば簡単なのかもしれない。
何か嫌なことがあったのかも知れないし、何か嬉しいことがあったのかも知れない。
口に出さなくても分かる、だなんて嘘だ。
だって今日藤ヶ谷が、どこで、誰と、どんなことをしたのかなんて俺には分からない。
「ねー。キスしたい」
「ん」
耳元でそう言われて軽く顔を後ろに向けると、俺の唇をはむはむ、と啄むようにキスをしてきた。
「北山からもキスしてよ」
されるがままの俺の態度に少し不満を覚えたらしく、眉間に少しだけ皺が寄った恋人の頬に俺は軽くキスを落とした。
「嫌だ、それ。ちゃんとキスして」
「やだよ、俺、明日朝早いもん。寝ようぜ」
「別に寝れば良いじゃん」
「絶対寝かすつもりねえだろ、お前」
くだらないやり取りをしていると、睡魔が本格的に俺を襲って来た。
「え、本当に寝ちゃうの」
「んー、眠い…」
「ここで寝たら風邪引くよ」
「ベット、いく」
藤ヶ谷の体温が心地良くて、俺はもう体を動かせなくなる。
重っ!だなんて聞こえた気もするけれど、宙に浮いた感覚がして、そして良い匂いにまた包まれた。
「もうちょいイチャイチャしたかった…」
俺の半分夢の世界へ行っている意識の中で、藤ヶ谷は俺の首元に顔をうずめてきた。
何でこんな今日甘えてくるんだろ。
やっぱり何かあったのかな。
「ふじがや」
「ん?何?」
「…なんか、あったの」
重い瞼を頑張って開けると、すぐ近くにあるやたらと綺麗な顔は驚きの表情に包まれていた。
しかしそれは一瞬で、またすぐ溶けてしまいそうなくらい甘い笑顔に変わった。
「何も無いよ。ありがとう」
そう言いながら、瞼にキスを落とされた。
君がそう言うなら俺はそれを信じるしかない。
君の世界がどんなものか知らなくても、2人だけの世界があるなら、俺はそれで良いから。
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たいちゃんらぶ(プロフ) - ・・にジーン( ;∀;)あぁぁぁ‥好きです・・ゆびわに気づいたたいぴ・・いつか!!!待ってます(*´σー`)エヘヘ (2018年11月17日 19時) (レス) id: 0f3cc9e55e (このIDを非表示/違反報告)
たいちゃんらぶ(プロフ) - ( ̄m ̄〃)ぷぷっ!っと愛おしいし‥会社のエースなのにガヤさんと離れるのやだー(´;ω;`)と潰れるガヤさんにゾッコン(←)な玉ちゃんが大好きです♪サプライズに鳩になるたいぴ可愛い♪俺の胸に飛び込んでおいで!って本気な玉ちゃんにwwやっと絞り出したおかえり (2018年11月17日 19時) (レス) id: 0f3cc9e55e (このIDを非表示/違反報告)
たいちゃんらぶ(プロフ) - 遠かった春・・( *´艸`)私‥夜布団の中で目が覚めた時更新チェック・・ついしちゃうんですが‥「春」シリーズだ!!! と思うとどんなに眠くっても起きて見ちゃう(`・ω・´)ゞきたやまくんの言葉に真っ赤になっちゃうガヤさんはホント可愛いし‥玉北ちゃんの飲み会は (2018年11月17日 19時) (レス) id: 0f3cc9e55e (このIDを非表示/違反報告)
たいちゃんらぶ(プロフ) - 君が壊れる日・・いつもは光の中に身を置いているようなみっくん・・だからこその抱える闇なのかも(´;ω;`)ウッ…なんて思ってしまいました。でもそれを見逃さないたいぴが隣にいるなら…涙。ふえーん( ;∀;)… (2018年11月17日 19時) (レス) id: 0f3cc9e55e (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - 北斗さん» コメントありがとうございます! 春シリーズ好評頂けて嬉しいです( ;∀;)! この2人と北山さんことはこれからも書いていこうと思っております!また是非読んで頂ければ嬉しいです! (2018年11月16日 1時) (レス) id: 05aff8376d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:魚 | 作成日時:2018年9月14日 22時