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モノをよく無くす。
まあ、確かにそう言われればそうだ。
でも別にこの性格で困ったことは無い。
「北山は、モノに執着心が無いんだと思う」
俺が決して頼むことは無い甘いカクテルを飲む藤ヶ谷を、俺は見つめた。
「北山の部屋って、綺麗じゃん。
ちゃんと掃除されてるし、散らかってるわけじゃない。
でも、それでもどこかにいっちゃうじゃん。
イヤホンとか、充電器とか。
この前なんて、スウェット無くしてたよね?」
「あー、まあ。でも出てきたよ?」
「俺が見つけたんでしょ」
俺の機嫌を損ねないように、藤ヶ谷が慎重に言葉を選んでいるのが少しくすぐったく感じる。
はっきりと言ってくれれば良いのに。
「モノ無くしても、北山はそんなに必死になって探さないじゃん?
新しいモノ買えば良い、とか無くても良い、とか。」
じわじわ、と追い詰められていくような感覚に、俺は店員を呼んでもう1杯、と注文をして藤ヶ谷の視線から逃げた。
しばしの休戦のような無言。
「何が、言いたいんだよ」
「いや、ほんと、不思議なだけ」
俺の声色に、今度は藤ヶ谷が引いて行った。
どうぞー、と新たなビールがテーブルに置かれ、俺は口をつける。
「俺、大切なモノは無くさねえもん」
「…え?」
大切なモノ。
例えば、今互いの胸元に光っているペアのネックレスとか。
もう5年も前のクリスマスに貰ったモノだけれど、1回も無くしたことは無い。
自分で買ったピアスは結構無くしがちだけれど、藤ヶ谷から誕生日に貰ったピアスは今でもきちんと付けている。
携帯は忘れるのに、名前が彫られたお揃いのキーケースだけは忘れたことが無い。
「ほら、無くしたことねえだろ」
俺の反撃に、藤ヶ谷は手で顔を覆っていた。
「え、あれ、どうした?」
「ああ、もう…ほんと、北山って、まじでさあ…」
何か呟いているけれど、その小さな顔は真っ赤に染まっているから、俺の反撃は見事に藤ヶ谷に重傷を負わせたらしい。
「藤ヶ谷から貰ったモノは、絶対無くさないよ」
「じゃあ、これも、無くさないで」
そう言って差し出された、小さな箱を俺は受け取った。
「…絶対無くさないよ」
ああ、そっか。
今日、記念日だっけか。
そういうことはどうしても忘れがちだ。
また大切なモノが増えて行く。
君から貰ったモノ。
それがどんなモノであれ、俺にとっては宝物になるから。
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たいちゃんらぶ(プロフ) - ・・にジーン( ;∀;)あぁぁぁ‥好きです・・ゆびわに気づいたたいぴ・・いつか!!!待ってます(*´σー`)エヘヘ (2018年11月17日 19時) (レス) id: 0f3cc9e55e (このIDを非表示/違反報告)
たいちゃんらぶ(プロフ) - ( ̄m ̄〃)ぷぷっ!っと愛おしいし‥会社のエースなのにガヤさんと離れるのやだー(´;ω;`)と潰れるガヤさんにゾッコン(←)な玉ちゃんが大好きです♪サプライズに鳩になるたいぴ可愛い♪俺の胸に飛び込んでおいで!って本気な玉ちゃんにwwやっと絞り出したおかえり (2018年11月17日 19時) (レス) id: 0f3cc9e55e (このIDを非表示/違反報告)
たいちゃんらぶ(プロフ) - 遠かった春・・( *´艸`)私‥夜布団の中で目が覚めた時更新チェック・・ついしちゃうんですが‥「春」シリーズだ!!! と思うとどんなに眠くっても起きて見ちゃう(`・ω・´)ゞきたやまくんの言葉に真っ赤になっちゃうガヤさんはホント可愛いし‥玉北ちゃんの飲み会は (2018年11月17日 19時) (レス) id: 0f3cc9e55e (このIDを非表示/違反報告)
たいちゃんらぶ(プロフ) - 君が壊れる日・・いつもは光の中に身を置いているようなみっくん・・だからこその抱える闇なのかも(´;ω;`)ウッ…なんて思ってしまいました。でもそれを見逃さないたいぴが隣にいるなら…涙。ふえーん( ;∀;)… (2018年11月17日 19時) (レス) id: 0f3cc9e55e (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - 北斗さん» コメントありがとうございます! 春シリーズ好評頂けて嬉しいです( ;∀;)! この2人と北山さんことはこれからも書いていこうと思っております!また是非読んで頂ければ嬉しいです! (2018年11月16日 1時) (レス) id: 05aff8376d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:魚 | 作成日時:2018年9月14日 22時