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コンコンッ


「ふじがやあ?」


ノックをしてみて部屋の中から返事はなく、ガチャ、と部屋の中に入ると、藤ヶ谷はベットに横になってどうやら寝てしまっているようだった。


「…おーい、寝てんの?」


なるべく静かに近付いて、藤ヶ谷家の遺伝であろう高い鼻筋を眺めた。


「漫画、借りてくぞぉ」


小声でそっと言うと、藤ヶ谷の机の上に置いてある鞄の隣に参考書やらが積まれていて、1番上にCDショップの袋が置かれていた。
あ、これか、寄せておいてくれたのかな、と勝手に都合の良い解釈をして袋を手にした。


「…えっ?」


ちら、と中を確認すると、それは完全にそういう系のDVDで、俺は思わず床に落とした。
カシャン、という音で藤ヶ谷が目を覚ましたのか、後ろでくぐもった声が聞こえてきた。



「ん、…は?、お前、何でいるんだよ」
「あ、いや、えっと、その…」
「…お前、!それ」


俺が落としたDVDに気付いたのか、藤ヶ谷は慌ててベットから立ち上がってそれを隠すように取った。


「…藤ヶ谷って、こういうの、見るんだな」
「勝手に、河合から渡されただけだよ。別に興味ない」



なんでだろう、胸が痛い。
当たり前なのに、藤ヶ谷だって、もうそういう年ごろなのに。

俺の中で、藤ヶ谷はいつまでも綺麗な存在だったから。
いつまでも、いつまでも触れられない届かない大切な存在。



「…っ、お前、何なの」
「わ、っかんないけど、なんか」



なんで俺、泣いてるんだろう。
ぽろぽろ、とあふれ出る俺の涙を見て、藤ヶ谷は眉間にしわを寄せて不機嫌そうにしている。


「もう…っ、俺の知ってる藤ヶ谷じゃないんだな、って思ったら、すっげ、さみしい。

いっつも楽しそうに笑ってて、弟の面倒見良い兄ちゃんなのに、俺の前だと甘えてくれて。
なのにいつの間にか俺よりデカくなってるし、知らない友達いっぱいいるしさ」


寂しい、と素直に認めてしまえば、もう涙は止まらない。
いつまでも勝手に泣いている俺を前に、藤ヶ谷はようやく沈黙を破った。



「お前、ほんと勝手なんだよ…っ、そういうとこが嫌いなんだよ。
人の気も知らないで、勝手に土足で入って来やがって。」

「分かんねえよ、藤ヶ谷の考えてること、分かんねえもん。なんで俺のこと避けんのっ」



ぎゅっ、と藤ヶ谷のTシャツの裾を握ると、藤ヶ谷は一歩後ずさりした。


「ほら、逃げるじゃん」

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たいちゃんらぶ(プロフ) - ・・にジーン( ;∀;)あぁぁぁ‥好きです・・ゆびわに気づいたたいぴ・・いつか!!!待ってます(*´σー`)エヘヘ (2018年11月17日 19時) (レス) id: 0f3cc9e55e (このIDを非表示/違反報告)
たいちゃんらぶ(プロフ) - ( ̄m ̄〃)ぷぷっ!っと愛おしいし‥会社のエースなのにガヤさんと離れるのやだー(´;ω;`)と潰れるガヤさんにゾッコン(←)な玉ちゃんが大好きです♪サプライズに鳩になるたいぴ可愛い♪俺の胸に飛び込んでおいで!って本気な玉ちゃんにwwやっと絞り出したおかえり (2018年11月17日 19時) (レス) id: 0f3cc9e55e (このIDを非表示/違反報告)
たいちゃんらぶ(プロフ) - 遠かった春・・( *´艸`)私‥夜布団の中で目が覚めた時更新チェック・・ついしちゃうんですが‥「春」シリーズだ!!! と思うとどんなに眠くっても起きて見ちゃう(`・ω・´)ゞきたやまくんの言葉に真っ赤になっちゃうガヤさんはホント可愛いし‥玉北ちゃんの飲み会は (2018年11月17日 19時) (レス) id: 0f3cc9e55e (このIDを非表示/違反報告)
たいちゃんらぶ(プロフ) - 君が壊れる日・・いつもは光の中に身を置いているようなみっくん・・だからこその抱える闇なのかも(´;ω;`)ウッ…なんて思ってしまいました。でもそれを見逃さないたいぴが隣にいるなら…涙。ふえーん( ;∀;)… (2018年11月17日 19時) (レス) id: 0f3cc9e55e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 北斗さん» コメントありがとうございます! 春シリーズ好評頂けて嬉しいです( ;∀;)! この2人と北山さんことはこれからも書いていこうと思っております!また是非読んで頂ければ嬉しいです! (2018年11月16日 1時) (レス) id: 05aff8376d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2018年9月14日 22時

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