初恋 ページ11
「わ、みっくんだ」
「どこどこ、あ、ほんとだ。今日も可愛い〜!」
「あ、こっち見た!」
女子が窓の外を見てはしゃいでいる。
きゃあ、と黄色い歓声を上げながら手を振っている様子を見ると、大方外からこちらに向かって手を振り返しているのだろう。
・・・天然たらしめ。
内心苛つきながらも、スマホに目を落として無視を決め込んでいると、クスッ、と笑い声が隣から聞こえてきた。
じろり、と隣の玉森を睨むと、何だか楽しそうに俺を見てくるから、俺はさらにイライラが募る。
「…なんだよ」
「いやあ?その眉間の皺は何なんだろうなあ、って」
「は?何うざいんだけど」
「イライラしてるねえ。ミツにちゃんと俺から言っておくからさ」
あんまり嫉妬させちゃだめだよ、ってね。
耳元でそう囁かれたかと思うと、玉森はエナメルを肩に引っ掛けて教室を後にした。
俺の舌打ちも、放課後の雑然とした教室に消えていく。
「太輔、お待たせ。帰ろ」
「アイス食いながら帰ろうぜー」
玉森が部活に行ってから、一人で待っていると、隣のクラスから渉と河合がやって来たので、俺は苛立ちと憂鬱を消すように立ち上がった。
___
「ほらよ」
「あざーっす」
「ごちです」
こういう浮かない気分の日に限って、悪いことは重なるものだ。
じゃんけんで見事に負けて3人分のアイスを買わされた。
「なんか今日、太輔イライラしてんね?」
「何どうした生理なの?」
「…まじうざい」
河合のキャッキャッと言う高い笑い声すらも苛ついてくる。
アイスを頬張りながらだらだらと3人で歩いていると、河合が何かを急に思い出したように鞄を漁った。
「そんな藤ヶ谷くんには、これを差し上げよう」
「…何これ」
にやついた顔で渡されたCDショップの袋を覗くと、そこには一目で分かるいかがわしいDVDのパッケージがあった。
「今回のはオススメだから、まじ見て」
「ん〜、河合ちゃんの性癖ってちょっとズレてるんだよなあ」
「いや、まじ今回は太輔のドンピシャを狙ったから、自信あるよ」
「お前ら勝手に話進めんな」
男子高校生のくだらない会話が、夏に溶けていく。
俺のちっぽけな嫉妬もいつの間にか消えて行ってしまったようで、袋を河合に突き返すことなく、そのまま自分の鞄に何気なく入れてしまって、俺はすっかりその存在を忘れてしまっていた。
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たいちゃんらぶ(プロフ) - ・・にジーン( ;∀;)あぁぁぁ‥好きです・・ゆびわに気づいたたいぴ・・いつか!!!待ってます(*´σー`)エヘヘ (2018年11月17日 19時) (レス) id: 0f3cc9e55e (このIDを非表示/違反報告)
たいちゃんらぶ(プロフ) - ( ̄m ̄〃)ぷぷっ!っと愛おしいし‥会社のエースなのにガヤさんと離れるのやだー(´;ω;`)と潰れるガヤさんにゾッコン(←)な玉ちゃんが大好きです♪サプライズに鳩になるたいぴ可愛い♪俺の胸に飛び込んでおいで!って本気な玉ちゃんにwwやっと絞り出したおかえり (2018年11月17日 19時) (レス) id: 0f3cc9e55e (このIDを非表示/違反報告)
たいちゃんらぶ(プロフ) - 遠かった春・・( *´艸`)私‥夜布団の中で目が覚めた時更新チェック・・ついしちゃうんですが‥「春」シリーズだ!!! と思うとどんなに眠くっても起きて見ちゃう(`・ω・´)ゞきたやまくんの言葉に真っ赤になっちゃうガヤさんはホント可愛いし‥玉北ちゃんの飲み会は (2018年11月17日 19時) (レス) id: 0f3cc9e55e (このIDを非表示/違反報告)
たいちゃんらぶ(プロフ) - 君が壊れる日・・いつもは光の中に身を置いているようなみっくん・・だからこその抱える闇なのかも(´;ω;`)ウッ…なんて思ってしまいました。でもそれを見逃さないたいぴが隣にいるなら…涙。ふえーん( ;∀;)… (2018年11月17日 19時) (レス) id: 0f3cc9e55e (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - 北斗さん» コメントありがとうございます! 春シリーズ好評頂けて嬉しいです( ;∀;)! この2人と北山さんことはこれからも書いていこうと思っております!また是非読んで頂ければ嬉しいです! (2018年11月16日 1時) (レス) id: 05aff8376d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:魚 | 作成日時:2018年9月14日 22時