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やっと重い腰を上げて、街へ出向いたものの、気持ちは沈んだままだ。
「随分と、不機嫌だね」
ニコリ、と穏やかに笑みを浮かべるのは、俺を呼び寄せた張本人である横尾さんだ。
「どうした?また何処かの貴族にでも呼びつけられた?」
「この前の…どっかの村の盗賊の討伐の…」
「ああ、あれか。ミツが大活躍したやつか」
「そんなんじゃねえよ」
散歩がてら屋敷を出たものの、ざわつく空気が煩くて、そちらの方向に向かえば盗賊が村を襲っていた。
見過ごすわけにも行かず、手加減をしつつ相手にし、騒ぎを聞きつけ随分と後からやって来た軍に後は引き渡した。
「あれ、最近話題になってた盗賊だったらしいじゃん。お手柄だよ」
「別にそんなんいらねえ」
「……ミツをそうさせてるのは、何なんだろうね」
全部、知ってるくせに。
意味深に俺に笑いかけてくる横尾さんがうざくて、俺は知らないフリをして遠くを見た。
「知らね」
_____
昔から1人で居た訳じゃない。
俺も、そこらへんにいるような平凡な魔法使いで、軍に所属して、上からの命令に従うような毎日を送っていた。
「北山」
「何?どうかした?」
「渉が今晩遊びに来るって」
そして使い魔も、ちゃんと居た。
「分かった、藤ヶ谷」
今いるあいつは、生まれ変わりだ。
前世は黒猫ではなくて、毛並みが美しい白猫だったけれど。
細めて笑う目。
歌うような鳴き声。
全部が好きだった。
藤ヶ谷が居ない人生を歩む方法を、俺は知らなかった。
ある討伐の遠征で、所属する軍が圧倒的不利な状況で襲われた時、死を覚悟した。
「北山…っ!!」
呪いの呪文が俺に飛んでくるのが分かった。
ああ、俺、死ぬのか。
ごめんな、藤ヶ谷。弱くて。
もっと強い飼い主の所に、今度は行ってくれ。
覚悟を決め、防御も解き呪文を受けるのを待っていると、目の前を何かの影が遮った。
「…ふ、じがや?」
「ばか、か…俺より、先に、し、ぬな…」
ぜぇ、ぜぇ、と途切れる呼吸の中で、藤ヶ谷はやっぱり綺麗に鳴いた。
血で赤く染まった藤ヶ谷との契約が、切れたのが分かった。
そこからの記憶はよく覚えていない。
ただ目が覚めたら真っ白な空間が広がっていて、包帯で全身がぐるぐる巻きになっていた。
そして、藤ヶ谷が死んだことを俺は知った。
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魚(プロフ) - たいちゃんらぶさん» コメントいつもありがとうございます〜! バーテンシリーズはT×Fも交えて更新して行きたいと思っております!第4弾でもお付き合い頂ければ嬉しいです(*^^*) きっと高校生時代から宮田さんは良い友達だったんだろうなあ、と思いながら書かせて頂きました! (2019年1月16日 9時) (レス) id: 05aff8376d (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - あみさん» コメントありがとうございます!バーテンシリーズは私も書いていて楽しいです…笑! ちょい笑い藤ヶ谷さんの策士っぷり是非楽しみにしていて頂ければと思います!魔法使いシリーズも引き続きよろしくお願いします! (2019年1月16日 1時) (レス) id: 05aff8376d (このIDを非表示/違反報告)
たいちゃんらぶ(プロフ) - した(/ω\)お玉ちゃんの想いも気になるっ・・もう一回読み直さねば・・(`・ω・´)ゞ (2019年1月15日 20時) (レス) id: 0f3cc9e55e (このIDを非表示/違反報告)
たいちゃんらぶ(プロフ) - けてたいぴも良かったね・・みやっちありがとーー好きなんかじゃない・・玉ちゃんに色々暴いてもらって(←)たいぴの性癖が(゚∀゚)♪チュっと舌打ちが重なったってところ・・好きです・・玉ちゃんとだと右Fさんはみっくんにはどうなるんだろう・・ってつい考えちゃいま (2019年1月15日 20時) (レス) id: 0f3cc9e55e (このIDを非表示/違反報告)
たいちゃんらぶ(プロフ) - 魚さん♪終電の後(≧▽≦)心配募らすたいぴの様子に( ̄m ̄〃)ぷぷっ!お迎えに行くもどういうスタンスで??って考えちゃうトコもww(後でみったん怒ったら困るしね♪)ってここでやっぱり宮っちアシストさすがです♪優しい子だ!!幸せみったん・・良かったね・・それを聞 (2019年1月15日 20時) (レス) id: 0f3cc9e55e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:魚 | 作成日時:2018年11月16日 1時