フタリだけの ページ21
「ガヤさん〜」
「なにー?」
ちら、と窓の外を見ると、外では藤ヶ谷が二階堂と千賀に薬草の配合を教えているところだった。
「えっ、違うよ!ニカ!それ入れたら!」
「ん?何?」
ドーーーン!!!
二階堂が何やら液体を入れた時、鍋が大爆発した。屋敷の中にいる俺まで振動が伝わってきた。
「ゴホッ、ゴホッ…」
「きゃー、ごめんなさい〜〜っ!」
「もうニカの馬鹿!」
「あは、また最初からやろっか、」
「うぅ…ごめんなさい」
灰を被って少し汚れた頰も気にならないようで、藤ヶ谷は朗らかに笑った。
二階堂と千賀が屋敷に住むようになってから、藤ヶ谷はよく笑うようになった。
玉森は前よりも頻繁に遊びに来るようになったし、静かだったこの屋敷が賑やかになったように思う。
___
「いい加減さあ、ミツも変な意地張ってないで二階堂に稽古つけてあげなよ」
横尾さんは呆れた様子で俺を眺めながら、ティーカップを渡してくれた。
藤ヶ谷が二階堂と千賀にここ最近はずっと付きっきりなので、俺は必然的に1人になる。
ひとりで森の奥で修行をするか、こうして横尾さんの所を訪れるか。それしか俺はやることがなかった。
「…藤ヶ谷が面倒見てるから俺は良いんだよ」
「あの2人に太輔取られて寂しいんだ?」
「そうかもな」
「あら、素直」
この胸の苦しさが、寂しさならくるものか、嫉妬からくるものなのか、分からない。
ただ、いつもより楽しそうな藤ヶ谷を見ていると胸が苦しくなって、俺は逃げたくなる。
沈黙が支配する部屋に、横尾さんの使い魔の白猫のミャー、という鳴き声が響いた。
「俺は、2人が変わってくれれば良いと思ったんだよね」
「ん?誰のこと?」
「弟子入りの話をしたのは、ミツと太輔が、もっと笑ってくれれば良いと思っただけなんだよ」
「…分かってるよ」
横尾さんの穏やかな笑みからは、それ以上の感情は読み取れないし、その言葉に深い意味は無いんだろう。
分かってる。
藤ヶ谷を、拘束していること。
あいつの自由を奪っていること。
2人だけの世界なんて、何処にもないことくらい、分かってるんだ。
「…っ」
口を開こうとした時、左胸に、じわり、と刺すような痛みが広がった。
______
471人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
魚(プロフ) - たいちゃんらぶさん» コメントいつもありがとうございます〜! バーテンシリーズはT×Fも交えて更新して行きたいと思っております!第4弾でもお付き合い頂ければ嬉しいです(*^^*) きっと高校生時代から宮田さんは良い友達だったんだろうなあ、と思いながら書かせて頂きました! (2019年1月16日 9時) (レス) id: 05aff8376d (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - あみさん» コメントありがとうございます!バーテンシリーズは私も書いていて楽しいです…笑! ちょい笑い藤ヶ谷さんの策士っぷり是非楽しみにしていて頂ければと思います!魔法使いシリーズも引き続きよろしくお願いします! (2019年1月16日 1時) (レス) id: 05aff8376d (このIDを非表示/違反報告)
たいちゃんらぶ(プロフ) - した(/ω\)お玉ちゃんの想いも気になるっ・・もう一回読み直さねば・・(`・ω・´)ゞ (2019年1月15日 20時) (レス) id: 0f3cc9e55e (このIDを非表示/違反報告)
たいちゃんらぶ(プロフ) - けてたいぴも良かったね・・みやっちありがとーー好きなんかじゃない・・玉ちゃんに色々暴いてもらって(←)たいぴの性癖が(゚∀゚)♪チュっと舌打ちが重なったってところ・・好きです・・玉ちゃんとだと右Fさんはみっくんにはどうなるんだろう・・ってつい考えちゃいま (2019年1月15日 20時) (レス) id: 0f3cc9e55e (このIDを非表示/違反報告)
たいちゃんらぶ(プロフ) - 魚さん♪終電の後(≧▽≦)心配募らすたいぴの様子に( ̄m ̄〃)ぷぷっ!お迎えに行くもどういうスタンスで??って考えちゃうトコもww(後でみったん怒ったら困るしね♪)ってここでやっぱり宮っちアシストさすがです♪優しい子だ!!幸せみったん・・良かったね・・それを聞 (2019年1月15日 20時) (レス) id: 0f3cc9e55e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:魚 | 作成日時:2018年11月16日 1時