2人の短いお話 その3

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ガヤ先輩は、大学の時の研究室の先輩だった。

甘いマスク、超がつくほどのジェントルマン。
不思議だった事は、そんなガヤ先輩に女の影がまるでない事だった。





「ガヤ先輩って…ちゃんと女の子に興味あります？」
「はあ？何言ってんの」




そう呆れたように笑うガヤ先輩の向こうで、完膚なきまで惨敗して消え去っていく女性たちを俺はいつも見送っていた。


結局、ガヤ先輩は1度も女性からのアプローチになびく事なく卒業していった。





____





大学を卒業して、それなりの企業に就職することができた俺は、ミツ先輩と出会った。




「はじめまして、北山です！全然堅苦しくなくて良いから！2人の時はミツ先輩とかで良いよ」





人懐っこそうな笑顔で手を差し出され、俺は手を握り返した。

たった1,2歳しか違わないというのに、部署のムードメーカーであり、中心人物であったミツ先輩は、俺の教育係だった。



人付き合いが上手なミツ先輩は、色んな取引先の人からご飯や酒の席に付き合わされているけれど、いつも笑顔で楽しそうに見える。





「ミツ先輩って、しんどい時無いんですか？」
「はあ？何それ」




2人でラーメンをつついている時に、そう聞いた事がある。

その日も取引先のオッチャンの長い話に捕まり、俺は欠伸を噛み殺すのに必死だったのに、ミツ先輩は落語でも聞いているかのような顔で話を聞くものだから、逆に怖い。




「それは、上司として答えれば良い？それとも、プライベートな答え？」
「んー、じゃあ、後者でお願いします」





上司として、なんてミツ先輩らしからぬ言葉を聞かされても胡散臭いだけだ、と思ってそう返事をしただけなのに、ミツ先輩が放った答えは眠気を吹っ飛ばすものだった。






「…恋人と喧嘩してる時は、しんどいよ」
「へ？」






その時、初めてミツ先輩に恋人がいることを知った。




____




聞けば聞くほど驚きの連続だ。

得体の知れなかったミツ先輩のプライベート。

恋人がいると知れただけでも驚きなのに、相手は同性だというのだから。




「引いた、よな」
「いや、別に驚きはしましたけど。でも好きなら良いんじゃないっすか？」




俺が素直にそう言うと、ミツ先輩は安心した笑みを浮かべた。

写真見たいっす、と言うと、少し照れた顔でスマホを操作して俺に見せてくれた。





「…ん？」




格好良いだろー！

と、機嫌良さげに笑うミツ先輩は、何故かガヤ先輩の写真を見せてきた。

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