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・・・いっ
おい・・・ふじ・・・
お・・・ろ・・・
ふじがや・・・っ
「んがあ・・・」
「んがあ、じゃねえ。着いたぞ、降りろ」
パチッ
目を開けると、そこは地下と思われる駐車場だった。
隣に顔を向けると、見慣れた憎き顔があった。
「早く降りろよ」
「・・・んん」
寝起きで口がカラッカラである。
頭もよく働かない。
ぼーっとしたまま車から降りると、北山は俺を待たずにすたすたとエレベーターのある方へ向かった。その右手には少し重そうな袋と、左手には軽そうなコンビニの袋があった。
エレベーターを降り、廊下を歩くと、いかにも高級マンションだと見てとれる。
こいつ、相当貰ってんな。
給料は歩合制では無いが、自分の手掛けた仕事がデカいほど、それに見あったボーナスが入る。
この裕福な暮らしはやはりそれだけこいつが有能であることの裏付けである。
「ここ、俺んち」
「あ、そう・・・」
「何もねえから、まじで」
鍵を取り出す北山は、両手のコンビニの袋が邪魔そうだけれど、持とうか、と声をかけるのも何となく気まずい。
「はい、どうぞ」
「お、じゃまします」
恐る恐る足を踏み入れると、言葉のとおり、何もなかった。テレビと、タンスと、ソファと、テーブル。真っ黒な家具だけが、カーペットも敷かれていないだだっ広いフローリングに置かれている。
「生活感無いだろ」
苦笑いを含みながら、北山はテーブルにごとり、とコンビニの袋を置いた。
「お前の身長に合うジャージあったかな」
そう言うと、北山は隣の部屋に消えた。
「・・・」
テーブルに置かれたコンビニ袋を覗くと、何本かのビールと、1本の安そうなワインが入っていた。
軽そうな袋の方には、おつまみなどが入っていた。
「これ。入るかな」
数分後、スーツからスウェット姿に着替えた北山が姿を現した。
本当にこいつ32歳か?
スウェットに身を包んだ北山は、大学生にも見える。相変わらずこの童顔凄い。
「お前、俺のこと今童顔だとか思ってんだろ」
「思ってる」
「こう見えてもクリスマスに一緒に過ごす恋人もいない悲しい32歳独身男性ですけど何か」
「・・・お前、結婚してなかったっけ?」
「誰の話だよ」
あれ、北山、結婚してるとか、なんとか噂で聞いたような。
でもこの部屋を見る限り、女っ気は何処にもないし、酒の席でのタダの戯言で聞いたのだろう。
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たいやき(プロフ) - 藤北目当てで読んだのに、『春』が1番好きで、何度も読み返しています!!あまり玉ガヤのBLは意外と読んだことがなかったので新鮮だったのと、『春』の藤ヶ谷くんがどたいぷすぎました。これからも頑張ってください! (2019年10月13日 1時) (レス) id: 2edd79c1bf (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - まきさん» コメント頂いていたのにお返事遅れてしまい大変申し訳ありません(*_*)! 短編の方で思いついた時にでも書いていこうかと思っておりますので、是非楽しみにしていただけると嬉しいです!コメントありがとうございました! (2018年10月22日 17時) (レス) id: 05aff8376d (このIDを非表示/違反報告)
まき(プロフ) - 初めてコメントさせて頂きます。以前に一回読んで、また読みたくなってしまい、読み返しました。とてもかわいい藤ヶ谷さんを見れて、楽しく読ませて頂いてます。『春』の続編を勝手ながら期待しております。 (2018年9月19日 11時) (レス) id: 0555875bff (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - 白雪さん» コメントありがとうございます!私の中で藤ヶ谷さんは受けだと思っていて笑 北藤、玉ガヤ大好きなんです笑 そう言っていただけて嬉しいです!ありがとうございます! (2018年8月5日 13時) (レス) id: 99aac380a8 (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - わたリンさん» コメントありがとうございます!お返事遅れてしまい大変申し訳ありません( ;∀;)!春の続編いつか書きたいと思っておりますので、楽しみにしていてください! (2018年8月5日 13時) (レス) id: 99aac380a8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:魚 | 作成日時:2018年4月16日 21時