2人の短いお話 その10

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昼前に仕事から戻ると、部屋には寝ぐせをつけたまま食事をとる寝間着姿の恋人がいた。

家を出るときに一応声はかけたけれど、恐らくそのまま寝たのだろう。テーブルの上に広がっている料理が、朝食なのか昼食なのか分からない。






「ただいま、いつ起きたの」
「お、おかえりー。さっき起きた、意外と早かったね」
「寝癖ついてるよ」
「どうせ今日休みだし」






北山が今、口いっぱいに食べているのはパスタだ。

ミートソースのパスタ、ハンバーグ、そして白米にコーラ。

それらが並べられたテーブルをちらっと眺める。
とりあえず冷蔵庫にあったものを出しました、というような食事を気にせずに、北山は箸を進めている。



こちらの視線に気付いたのか、北山はハンバーグを箸で切りながら説明してきた。







「昨日の残りのハンバーグ食べようと思って温めたんだけど」






そう言ってハンバーグを口した後に、今度は箸で器用にパスタを持ち上げる。





「んで、途中でパスタ食べたくなってきて茹でたんだわ。そしたら、ソース無い事に気付いて、ハンバーグのあまりのひき肉使ってミートソース作ったの」






そしてパスタを咀嚼した後に、今度は茶碗によそってあるご飯に手を伸ばす。





「で、確か炊飯器に米残ってたよなー、って思ってそれもあっためた」






ごく、と飲み下したかと思うと、最後にコーラを口に含み、北山は満足げにまたそのルーティンを頭から始めた。






「…そのコーラは？」
「飲み物これしかなかったから」
「ふうん、」






グルメな所がある北山は、基本的に外食ばかりだ。その反動なのか、家で食べるときはとことん適当なものしか食べない。

この食事はまだマシな方だと思う。

この前は、ドレッシングが何もかかっていない千切りキャベツと、納豆とタコの刺身を食べていた。流石に見て居られなかったので、米をよそって渡し、キャベツにはトマトなど他の野菜を加えドレッシングをかけてやると、美味い、と言って食べていた。








「食べる？」
「いや、大丈夫です」







丁重に北山の申し出を断り、冷蔵庫からハンバーグを取り出してレンジに入れた。

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