2人の短いお話 その10

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山もオチも無いですが、北山くん舞台お疲れ様でした！



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何となく、外に出たい気分だった。





「……寒っ」






今日と明日は久しぶりの連休で、起きたのは昼過ぎだった。


いまいちすっきりしない頭のまま、掃除や洗濯に本腰を入れるでもなく手早く終わらせた。それから最近流行りのデリバリーサービスを利用して、遅めの昼食を済ませた。

そこから本を読んだり、溜まっていた録画を消化したりすれば、気付けばもう夜になっていた。


もう夜だけれど、何だか頭の中に靄がかかったままだ。それを払拭したくて、外の空気を吸おうと思い立ちベランダに出たのだった。






「風邪引きそう……」






病は気から、と言い張る恋人は、インフルエンザの予防注射を全くしない。





"注射したらもうインフルにかからない、って安心しちゃって逆にかかっちゃう"





そう豪語して、予防注射をしなかったら去年あっさり感染した。今年は何が何でも注射してもらわないと困る。






「ただいまあ」






いつ病院の予約をしよう、と寒空の下考えていると、部屋の中から声が飛んできた。振り返ると、室内の照明に恋人の姿が照らされていた。






「あれ、ふじがやー？」






ベランダの窓を開けて室内に入ると、寒暖差で鳥肌が立つ。
あったかい。






「ごめん、外出てた。おかえり」








改めておかえり、と告げると、目を丸くして見つめ返された。







「外で何してたの？」
「なんも。頭スッキリさせたくて」
「ふうん、」








実は北山と会うのは随分と久し振りだったりする。

東京公演が終わり、大阪公演までのわずかな休みに、北山と会うのを躊躇ったのは自分の方だ。

休みといえどまだ幕は降りていない。

けれど会えば絶対触れたくなるし、抱きたくなる。

別に触らなきゃ良い。
会って、会話をして、ご飯を食べて、一緒の布団で健やかに寝る。

ただそれだけのことだ。

ただそれだけの事なのに、出来ないのだ。
いつになっても彼に求めるものは至極簡単で、それでいて浅ましい。


己の欲求を抑える為に、北山と会わない、という極端な選択肢を選んだ。

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