隣の芝生は青く見える ページ10
2人の短いお話 その9の冒頭3作のシリーズのお話
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滅多に開かない事務所のドアが開いた。
パソコンから目を離し入口の方へと目をやると、銀縁眼鏡の奥の瞳が少しだけ赤らんでいる友人であり、唯一の上司がいた。
「お疲れ」
「おー、横尾さん、久しぶりだね」
こうして直接会うのは2,3か月ぶりかもしれない。仕事の事で以前よりも頻繁に連絡を取るようになったものの、その分顔を合わせる機会は少なくなってしまった。
少しふらついた足取りでソファに深く腰掛けた横尾さんに話しかける。
「飲んできたんだ?」
「そう。お偉いさんに付き合わされた」
ウォーターサーバーから水を汲んで差し出すと、ありがとうと一口飲んで息をついて、眼鏡を取った。
彼と出会った時から、横尾さんは店の中で1番偉い人だったし、彼にとっての「お偉いさん」を見たことがないな、と思う。
「ニカは送迎?」
「そう。ちょっと遠くだからまだ帰ってこないかな」
「そっか。」
時間ができたから久しぶりに事務所に顔を出す、と言ってくれていたのだが今にも寝落ちしてしまいそうだ。
相変わらず働き者だ。
「どう?仕事、慣れた?」
「んー。まあ、俺がお客さん相手に何かする訳じゃないからね。新規のお客様もまだ相手にしてないから、」
大御所俳優や大企業の社長、政治家などを相手にする超高級店かつ紹介制ということもあり、俺が店長になってから実は一度も新規の顧客を取っていない。
紹介する際も紹介料と言うべきか口止め料と言うべきか。
とにかく支払う対価は決して安くはないので、横尾さん曰く今までも年に3、4人ほどしか新規の客は取ってこなかったらしい。
「じゃあ、そんなミツに初めての新規のお客様を相手にしてもらおうかな」
「え」
鞄からいつものようにタブレットを取り出すと、横尾さんはゆっくりと俺に見せてきた。
そこに写っていたのは温厚そうな笑みを浮かべる男だった。今までもそうそうたる顔ぶれを見てきたし、その名前もしくは顔を一度は何処かで見たことがあるような人々ばかりだった。
しかし写真の彼は見たことも聞いたことも無い男だった。
「…どんな金持ち?」
「言い方悪いな。」
俺が素直に聞くと、横尾さんは鼻で笑った。
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風紀桜(プロフ) - はじめまして!更新楽しみにしています。私は高嶺の花シリーズと魔法使いパロが好きなのですが続きの更新はありますか?これからも頑張ってください! (2020年5月1日 22時) (レス) id: d0d9d74493 (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - 桜さん» コメントありがとうございます!TFカップルとKくんな関係性、気に入って頂けて嬉しいです〜!いかにも続編ありそうな書き方にしてしまいましたが、今のところ何も思い付いてないまま見切り発車してしまったので…!笑 気長に待っていて下さい。゚(゚^ω^゚)゚。 (2020年4月7日 20時) (レス) id: 5a8ec8d2a5 (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - 魚さん、こんにちは。毎回更新楽しみにしてます。今回のお話続きがとても気になります!!3人の関係性がすごく好きなので、ぜひ続き楽しみにしています! (2020年4月7日 9時) (レス) id: 0555875bff (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - かなさん» かなり久しぶりの更新にも関わらず、コメントありがとうございます…。゚(゚^ω^゚)゚。!長編なかなか更新できず悩んでいるのですが、溜めてある下書き少しずつ公開していきたいと思います! (2020年4月2日 20時) (レス) id: 5a8ec8d2a5 (このIDを非表示/違反報告)
かな(プロフ) - 更新ありがとうございます。何気ない休日の2人のやり取りに癒されました。高嶺の花シリーズも大好きです。次回更新楽しみに待っています。 (2020年4月2日 16時) (レス) id: d46f297406 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:魚 | 作成日時:2019年10月31日 19時