2人の短いお話 その8

勘違い ページ48

『今どこいんの』





ぴろん、と通知音と共にやって来たメッセージに目を擦る。

ん、と時計を確認するとだいぶ時計の針は進んでいて、いつのまにか寝てしまっていたらしい。






「ふじがや、の、い、え…」






ねみー。せっかく帰ってくるの待ってたけど、もうこのまま寝よ。

返信をしてソファからベットへ移動しようとすると、今度は勢いよく着信音が鳴り響いて、こんな夜中に誰だよと画面を寝ぼけ眼で見る。






「んえ、……もしもし藤ヶ谷？」
『ちょっと、なんで俺の家居るわけ』
「ええ……来ちゃダメな日だったっけ」






電話口から聞こえてきたのは何故か不機嫌な藤ヶ谷で、ふああ、と欠伸を思わずしてしまうと舌打ちまでされてしまった。

同棲をしているわけでは無いので、合鍵を使ってお互いの部屋を行き来している。今は藤ヶ谷の舞台期間中なので、ここ最近、会うのは藤ヶ谷の部屋だ。







『今夜は家にいて、って言ったじゃん！』
「え、だから、藤ヶ谷帰ってくるの待ってたよ」
『違うじゃん！…もー、今から帰るから待ってろバカ山』
「え、ちょ。」






ブツっ





無情にも切れてしまった電話に、ええ、と困惑する。あんな不機嫌な藤ヶ谷と、寝起きの俺だなんて喧嘩する未来しか見えない。

そもそも家にいろ、と言われたので宮田との飯を断って、何ならちょっと期待してイロイロと準備までしたのに。

帰って来なかったのはそっちだろ。





……と、眠気と苛立ちが重なって、藤ヶ谷が部屋に入ってきた時には、怒りを隠すことは出来ないくらいには仕上がっていた。







「何なんだよ、ちゃんと待ってたのに。帰ってこなかったのそっちだろ」
「はあ？何でキレてるわけ？」
「お前が怒ってるからだろ！」







せっかくの休演日にも、藤ヶ谷はスマホをずっと見ていたり、俺を置いて何処かへ出掛けたりするし、だからこうしてわざわざ連絡をくれて舞い上がっていたのは俺だけだったのかも知れない。

そう気付いたら今度は悲しくなってきて、スウェットを脱いで私服に着替える。







「は？、なに？」
「帰る、これ以上喧嘩したくない」
「こんな夜中に外出歩くなよ、危ないだろ」
「やだ、帰る」






帰る、帰さない、の無駄な応酬を繰り広げていると、2人のスマホが同時に鳴った。

…何となく2人で画面を見て、あ、と声を漏らす。







『北やん、誕生日おめでとう〜〜！！』

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