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「裕ちゃん、いつから帰ってきてたの?」
「んー。一週間前くらい」
「そっかあ。久しぶりに会えてうれしい」
俊くんの好きなところはたくさんある。
今みたいに、理由を聞いてこないところ。
人の気持ちを推し量るのがうまくて、自分の気持ちを押し付けることもしない。
だから昔から親にも、友達にも、誰にも言えないことでも俊くんにだけは相談してきた。
「私さあ、昔からやりたいこと無かったじゃん」
「そう?釣りとか好きだったじゃん。夏よく川行ったよね」
「趣味じゃなくて。夢みたいなの」
「たしかに。あんまり聞いたこと無いなあ」
空になったコップに俊くんが麦茶のおかわりを注いでくれる。
ソファにおいてあったよくわからないキャラクターのクッションを抱いて座布団に座り直して、ありがとう、と礼を言う。
「だから、就活も全然やる気なくて。大学だってとりあえず一人暮らししろ、って言われたから地元出たみたいなもんだしさ。もう7月なのにまだ内定貰ってないんだよね」
「そっかあ、俺も公務員1本だったからこの時期内定出てなくて不安だったなあ」
「…別に不安じゃないよ」
「え、そうなの」
優しい声色で相槌を打たれると、不思議と自分の感情がするすると出ていく。
別に不安じゃない。
不安がってるのは親だけで、自分自身は何の不安も無い。何とかなるだろ、とどこか自分の未来を適当に見ている節がある。だって就職出来なくったって死ぬわけじゃないし。
こんなことをもう社会人の人に話すのってどうなんだろう。
そう思いながらも、目の前にいる幼馴染は相変わらず穏やかな笑みを浮かべながら相槌を打つだけだ。
「だから、まあ、とりあえずどーしよっかなあ、って帰ってきたの」
「そっかあ」
「俊くん、どうすれば良いかなあ。もう面倒になっちゃった」
えい、とクッションを適当に俊くんに投げつけると、俊くんはまた優しく笑ってそれを受け止めた。
「とりあえずさ。裕ちゃん、卒業したらこっち戻ってきなよ」
「実家?」
「まあ、実家じゃなくてもこっち戻ってきて一人暮らしでも、」
「ニートは駄目なの分かってるよ。多分お母さん許さないし」
じゃあさ、と俊くんは言い改めて、クッションを置いた。
ていうかこのキャラクターまじで何なんだろう。紫色で、鼻が大きくて、ちょっと溶けてる。俊くんに似てるかも。
「俺と一緒に住まない?」
「……え?」
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魚(プロフ) - さくらさん» コメントありがとうございます!高嶺の花シリーズ、書き始めた当初は短編で終わる予定だったんですがそう言って頂けて嬉しいです(*^^*) 誕生日の後日談は下書きに眠っているのでもうすこし書き加えたら出しますね〜! (2019年9月26日 12時) (レス) id: cc0d16b1ad (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - ふじみつさん» コメントありがとうございます!お返事すっかり遅くなってすみません。゚(゚^ω^゚)゚。!魔法使いさんシリーズに探偵シリーズに…この前更新したのはいつだっけ…という作品ばかりでお待たせしてすみません!いつか書きます!笑き (2019年9月26日 12時) (レス) id: cc0d16b1ad (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - こんにちは、魚さんの作品いつも更新楽しみにしてます!個人的に高嶺の花シリーズがとても好きで、なん度も読み返してます。北山くんの誕生日の件の続きがとても気になります、、、ぜひ見たいです^ ^ (2019年9月26日 10時) (レス) id: 1e2dbff765 (このIDを非表示/違反報告)
ふじみつ(プロフ) - こんにちは。みっくんのお誕生日になんて素敵な物語!ありがとうございます。私「春」がとても好きで、教師さんも、バーテンさんも、探偵さん、魔法使いも〜〜!完結したばかりですが、色々続き待っていても良いですか? (2019年9月19日 11時) (レス) id: a043f1bcd7 (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - ぴこさん» コメントありがとうございます!わー!先生パロのお話も読んで頂けたとは…( ;∀;)!嬉しいです、あの2人のお話もまた書きたいなと思っていたのでやる気が出てきました笑 リアルな2人の関係性はこんな感じかな、と思い甘めな設定で書かせて頂きました(*^^*) (2019年9月18日 12時) (レス) id: cc0d16b1ad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:魚 | 作成日時:2019年7月19日 2時