2人の短いお話 その8

願いが叶う砂 ページ22

再び金髪ネタで1作品

____



『今日はペルセウス座流星群がよく見えるでしょう』





ペルセウスざりゅうせいぐん。

ほう。
もしかしたら夜見れるかもしれない。



朝の天気予報でそんなことをキャスターが言っていたな、と思い出し、タバコを吸いがてらベランダへ出てから、既に2,30分は過ぎている気がする。


猛暑が落ち着き、ようやく熱帯夜にも終わりが見えて来た。心地よい気温なので外に出ていても苦痛ではない。そして先程から夜空を見上げているが、月明かりが眩しくて、流れ星など見える気がしない。

特段星座に興味がある訳ではないけれど、部屋の中に居ても特にやることはないので根気強く夜空を見上げていると、玄関の方から物音がした。





ガチャ



「うお、起きてたのかよ……びっくりした」
「おかえり」






リビングに入ってきた人物が部屋の電気を点けた。ベランダにずっと出ていた俺から見た彼は、いつもよりも眩しく見える。

最近染めたばかりの金髪も、LEDに照らされより一層明るく見えて、なんだかお星様みたいだな、と思った。

ああ、ペルセウス座流星群の到来じゃん。

こんなことを、口にしたら絶対に馬鹿にされるから言わないけれど。





「なんで電気つけてねえの」
「虫寄ってくるから」





流れ星を探していた、という目的は告げずにタバコの火を消して部屋に入ると、ただいまと小さく返された。時計を確認するともう日付が変わりそうな時間で、俺も暇だな、と欠伸を噛み殺した。



ソファに腰掛けると、北山は洗面所へと消え、ふじがやー、と呼び掛けられる。





「明日仕事ー？」
「休みー」
「洗濯予約しといて良いー？」
「良いよーありがとー」






洗面所から飛んでくる声に答えると、程なくして北山が戻ってきた。ちら、と横目で戻ってきた北山の姿を見ると下着姿で何とも間抜けな格好だった。

俺の視線に気付いたのか、北山はいそいそと寝室へと消えて、そしてまた手にタオルやら下着やらを抱えて現れた。





「洗濯機に突っ込んでそのまま風呂入ろうとしたら、下着とか持ってくの忘れた」
「ああ、そう」







別に説明しなくても良いんですけど。

北山はこういう所がある。
口で言って欲しいことを言ってくれなくて、どうだって良いことを何故か報告してくれる。
彼のその基準は未だによく分からない。

そしてまた消えていく後ろ姿を見送った。

・→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す