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「…藤ヶ谷いる前でする話じゃねえだろ」
「ほら、そうやって逃げる。藤ヶ谷くんとの将来、考えてない証拠やん」
「それとこれとは話がちげえって言ってんの」
「何が違うん?」
「……ああ、もう、うざいんだよ!関係無いだろ!」
ガンッ!!
乱暴に置いた缶ビールが少しこぼれ、カーペットに染みを作った。
藤ヶ谷も俯いたままだし、大倉もしつこいし、一体何なんだ。
大倉を睨むと、大倉は何も気にならない様子で鼻で笑って返してきた。
「宏光のそういうとこ、嫌いやわ」
「喧嘩売ってんのかよ」
「何でお前はそうやって突き放すん?」
お前の将来、俺が心配したらあかんの?
強く言い返そうとした時、大倉が最後にそう呟いてきて口をつぐんだ。
「10年間お前と一緒に暮らして来て、息子見てるような気持にもなったし、弟みたいにも思ってたし、親友やとも思ってたよ。
俺にとって、宏光は大切な存在や、って分からんの?なあ、何で?
何でお前はそうやって人のこと切り離すようなこと言うん?」
「…っ、そういうことじゃっ」
「そういう事やろ。宏光にとって、俺は何なん?」
「忠くん、ごめんって」
「やめろや、そうやって良い顔すんの、馬鹿にされてるみたいで腹立つわ」
ひゅっ、と息を飲んだのは俺だろうか。
怖い。
大倉が、怒ってる。俺が怒らせてしまった。
どうしよう、出ていけ、なんて言われたら。
どうしよう、また1人になったら。
「…っ、ご、めん」
頬を伝う涙が熱い。
酒の酔いも手伝って、涙が止まらない。
何で俺は、いつもこうなんだろう。
どうして、俺は。
「ひとりに…っ、しないで…」
ギュ
「ほんっと、馬鹿な奴やな」
「…っ」
痛い。
胸が張り裂けそうに痛い。
それに息苦しい。
背中に回された力強い腕の感触に、大倉に抱き締められているのだと気付いた。
「ごめんな、泣かせて。ごめん」
大倉の胸の中で、一気に緊張が解けて涙が溢れてきた。
「なあ、宏光。」
「っな、に…」
「10年前、俺のとこ来て後悔してないか?」
「してるわけ無い!…忠くんに、会えて本当に良かったと思ってる」
もし大倉がいなかったら、と思うとぞっとする。
名前とたった1枚の写真というか細い糸を辿って出会えた大倉に、俺は救われたのだ。
「そっか。それが聞けただけで、もうええよ」
ぽんぽん、と撫でてくるその手は、10年前、出会った頃と何も変わっていなかった。
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魚(プロフ) - xxxさん» コメントありがとうございます!高嶺の花シリーズ、本当はシリーズ化する予定ないまま書いたのですが意外と皆様から好評で嬉しい限りです…。゚(゚^ω^゚)゚。まだ完結はしておりませんので、気が向いたら書かせていただきますね! (2019年9月7日 13時) (レス) id: cc0d16b1ad (このIDを非表示/違反報告)
xxx(プロフ) - もっともっと続きを読みたいです!これからも頑張ってください! (2019年9月7日 8時) (レス) id: 56bd14aad5 (このIDを非表示/違反報告)
xxx(プロフ) - 初めまして。高嶺の花シリーズ大好きです。 (2019年9月7日 8時) (レス) id: 56bd14aad5 (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - たいちゃんらぶさん» どれもこれも超未完成な中途半端な状態だったんですが、下書きにしておくのも何だかなあ…と思い、公開してしまいました…|・ω・`) いつも適当な更新スタイルですみません!笑 気が向いたらシリーズ化していきたいと思っております〜! (2019年7月2日 23時) (レス) id: cc0d16b1ad (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - あんさん» お返事遅れてすみません。゚(゚^ω^゚)゚。!あんさんの作品を読んでいて、Kさんの方がFさんに対する独占欲強いんだろうな、と思い、Tくんと居るところを見てめちゃくちゃ嫉妬する…っていう展開を考えて書かせて頂きました笑 (2019年7月2日 23時) (レス) id: cc0d16b1ad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:魚 | 作成日時:2019年4月14日 1時