2人の短いお話 その6

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「わ〜、北山がデレているぅ、貴重な日だ…」




タオルで俺の頭を優しく拭きながら、藤ヶ谷は顔中にキスを落としてきた。





「うー、くすぐってえ」
「どうしたの、北山くん。何があったの」
「別に何もねえよ」






藤ヶ谷といる時間を重ねる度に、好きな所が増えて行く。
好きが積もっていって、きっと俺の方が好きが大きいんじゃないだろうか。

絶対言わないけど。






「北山の友達に会えてうれしかったよ、俺」
「んー？ああ、ニカと千賀？」
「そう。知らない北山が見れて嬉しかった」
「…あっそ」






複数人で遊びに行った時に恋人を連れて来る友達の心理が、俺にはよくわからない。

俺には俺の交友関係があって、そこに広がる世界があって。もちろん藤ヶ谷の世界がある。
そこに立ち入るのは誰にも許されない事だと思っていたから。






「北山ってさ、俺の交友関係に干渉してこないよね」
「うん、まあ。だってお前にはお前の付き合いがあるじゃん」
「そういうとこ、好きだけど、ちょっと寂しい」






え？と顔を上げようとすると、タオルで前髪を拭かれて目を閉じるしかない。






「俺は、北山と全部共有したい。
今は言えないかもしれないけど、北山の心の準備が出来たら、タマたちにも話したい。

俺の恋人です、って紹介させてよ」






タオルで優しく撫でられながら、藤ヶ谷はキスをしてきた。

甘すぎる。
胸やけするみたいに甘い。






「…ライブ、また行きたい」
「うん、来てよ。ニカと千ちゃんと一緒に」





今度は俺から口付けると、藤ヶ谷は満足げに笑った。

藤ヶ谷の世界に、俺という存在が許されているのなら、少しでも長く、傍に居たいと思う。








「北山、好きー」
「…お、れも、好き」
「っ！北山…っ」
「う、お、お前！ちょ、脱がすんじゃねえー！！」





本当の恋人の姿は、ただの変態だと思うけれど。

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