2人の短いお話 その6

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「はい、これ。この前旅行に行った時のお土産」
「へえ、ありがとう」
「蜂蜜使ったボディクリームなんだけど、すごい肌綺麗になるんだって」




そう言って紙袋を渡しながら笑うガヤは、最近ますます綺麗になっている気がする。

綺麗、というか、可愛くなった。





「誰と行ったの？」
「え？北山だよ」






当たり前でしょ、と言わんばかりのその返事に対して、自分の心の中にはモヤモヤが重なった。

“北山くんと付き合うことになった”、と報告されたのはもう2年前の事だ。

初めて会ったのは飲み会の席だった。そして2人で抜け出し、出会ったその日にホテルに行った、と聞かされた時、ガヤを心底軽蔑した記憶がある。

きっとこのまま結婚するんじゃないだろうか、と親友の未来を勝手に想像する一方で、その未来が果たして本当に幸せだろうか、と最近よく考えてしまうのだ。





「北山くんと長いね」
「うん、まあ」
「こんなに長続きすると思ってなかった」
「ふふ、だよねー」





だよねー、なんて笑っているけれど、もともと北山くんと付き合い始めた理由が「北山くんが元カレというステータスが欲しいから」という何とも不純な動機なのだから、ますますガヤの未来が不安になってくる。

グラスを持つガヤの右手の薬指には、昨年のクリスマスに貰ったという小ぶりな指輪がキラリ、と光っていて、きっとそれが左手の薬指に移るのもそう遠くないのかも知れないけれど、やっぱり気になる。






「ガヤって…何で北山くんの事好きなの？」
「ええ？難しいね、その質問」
「北山くんと話したこと無いからどんな人なのかいまいち分かってないんだけど、すごい遊び慣れてる男にしか見えない。」
「ふはは、まあ、あながち間違ってないよ。チャラいしね」






かなり失礼なことを言っているのは自負しているのに、それに対してもガヤは何故か楽しそうに笑っている。





「でも、まあ、何か、好きかな。」






ぽつり、と呟かれたその言葉は紛れもない本心で。
きっとガヤの未来を示しているんだろう。







「そんなに気になるなら北山と会う？」
「えっ？」
「バイト終わったら来てくれると思うから、連絡しとくね」







悪戯を思い付いた小悪魔に振り回される北山くんが容易に想像できて、ごめん、と少しだけ申し訳なく思う。

でも会ってみたかったのは本当だったから、その言葉に甘える事にしたのだけれど。

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