2人の短いお話 その6

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「…ごめん。
俺もいきなり、勢いで言っちゃって。
そりゃ戸惑うよね。何か、北山のリアクション違ったもん。ドッキリかと思ったよね。」





…ええええ、何でそんなに聞き分け良いの！？

むしろ、もっと脳内お花畑な展開を想像していたのに、藤ヶ谷は先ほどまでの輝いた表情から一変して今にも泣きそうな顔をしている。





「…藤ヶ谷の事っ、確かに、恋愛感情として見たことは無かった。だから、さっき、ちょっと勢いでOKしちゃったのは認める。

悪かった。ごめん」

「うん。そうだよね、ごめんね、気持ち悪かったよね」





もう連絡しないから、と肩を落とす藤ヶ谷。

う…゛、そんな顔されたら…っ






「でも！別に、き、嫌いじゃないし、嬉しくないわけじゃなかったから…！こ、れから、俺が好きに、なれるよう、藤ヶ谷には、ど、努力して欲しい…！」






……ん？








「え？」
「あ？」
「ん？」








ぱちぱち、と藤ヶ谷の瞬きの音と、横尾さんの開いた口と、俺の流れる汗と。








「〜〜〜っ！え、良いの！？北山！ありがとう！超大好き！」






俺、何か間違ったかもしれないなあ。

そう思いながらも、藤ヶ谷の満面の笑みを見たら、何だか胸が高鳴ったような気がするのも嘘じゃなかった。



＿＿＿＿






そんな変な馴れ初めで恋愛関係に発展した俺たちが、正式に恋人となったのは遅くなかった。

それぞれ違う大学に進学してからも、お互いの部屋に行き来するようになり、そして藤ヶ谷の誕生日にプレゼントを渡しながら、もう1度告白させた。

そしてそれを受け入れる形で付き合っているし、何やかんやで同棲まで始めてしまった。





「北山さ、昨日なんかタマに言われた？」
「…何で？」
「ライブに呼びたい人いるからチケットちょうだい、って言ったらすげー怪しまれたから」
「まあ、別に、何も」
「そっか」









藤ヶ谷の好きと、俺の好きの重さはどっちが重いんだろう。

大学に入学してから、藤ヶ谷は事あるごとに俺を自分自身の友人に紹介させようとしてきたけれど、それは嫌だ、と断り続けてきた。

知らない藤ヶ谷がいるみたいで、嫌だったのだ。







「きたやまー」
「ん？」






おいで、と言わんばかりに腕を広げてる藤ヶ谷に俺は素直に勢い良く飛びつく。ぐえ、と唸った声も聞こえたけれど、気にせず濡れた髪のまま藤ヶ谷の胸に顔を埋めた。

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