2人の短いお話 その6

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騒がしい放課後。
ぼーっとしていた俺に北山が話し掛けてきた。




「なんか、最近いらいらしてるね。女の子と遊んでないの？」





最近寝不足なの？、とでも聞くかのように、北山はさらりと爆弾発言を落としてくる。





「うるさい」
「さっさと幼馴染の彼女に手出しちゃえば良いのに」
「興味ねえよ」





興味が無い、なんて嘘だ。理性が歯止めをかけている。
だって大切な幼馴染だ。

…でも手に入るのが難しければ、難しいほど俺には魅力的に光ってしまう。

北山は俺の眉間の皺をつん、とつついてきた。





「俺は二番煎じなんてもっての他だから藤ヶ谷の考えなんて一生理解できないけど、あの子は何か可愛いよね」
「あの子って…お前、顔知ってんの？」
「うん。俺の女の子の友達だったから。この前一緒にご飯行ったよ」






そう言って、ひらひら、とスマホの画面をかざしてくる。恐らく幼馴染の彼女の連絡先だろう。俺が睨んでいるのを気付かないのか、北山は言葉を続けた。





「ちょっとふっくらしてて、抱き心地良さそう。あれくらいがちょうど気持ち良いんだよなあ」
「…」




じろり、と北山を睨むと、明るい表情のまま俺を見つめ返した。




「何？藤ヶ谷、興味ないんでしょ？じゃあ俺が遊んでも別に良いじゃん」





その笑顔とは裏腹に、とんでもないことを口にする北山に、俺は苛ついた。


俺が欲しいのに、何で奪うんだ。
俺が欲しいものに、触るな。





「ふざけんな…手出すんじゃねえ」





騒がしいはずの教室で、俺と北山の間だけに沈黙が訪れた。





「…はははっ！やばい。本当に今、女抱く目してたよ」





俺の苛立ちとは裏腹に、北山は爽やかに笑い飛ばした。





「そんな目で見られたら、どんな女の子だって喜んで藤ヶ谷に抱かれるよ？早くあの子のこと、抱きなよ」
「…ったく、何がしたいんだよ」
「いや？俺はただ藤ヶ谷のことが面白いなあ、と思ってるだけ。幼馴染の彼女が好きなんて、ドラマじゃん？欲望に素直なままに生きるのが１番だよ」
「ほんっと、まじで良い性格してる」
「ありがとー」
「褒めてねえよ、ばーか！」





北山はけらけら、と笑いながらいつものようにスマホを弄り始めた。きっとまたどこかの女に声を掛けているのだろう。

不本意だったけれど、俺は、自分の愚かな欲望に抗うことを止めた。



「北山」
「ん？」
「その子の連絡先、教えて」




にこり、と完璧な爽やかな笑顔で北山は笑った。

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