2人の短いお話 その6

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面白い男だと思った。
まず俺の女に手を出したのがそもそも面白い。




「…なあ、誰かに抱かれた？」





ある夜、泣きぼくろが似合う年上の女と体を重ねていた時、その子を見下ろしながら聞いてみた。



人間そう簡単に隠せるものじゃない。ゆらゆらと、困惑するような、瞳。
何と迷ってる？
誰と重ねてる？




「…宏光、だけだよ」
「ふは…嘘つき」





うわあー、超萎えた。
もういらねえ。



ベットから降りて散らばっていた服を身にまとうと、その子は焦ったように大粒の涙を流しながら、藤ヶ谷の名を口にした。





「捨てないでっ！ごめん、ほんとにもう、こんなことしないからっ」
「ふうん。藤ヶ谷、かあ。」
「お願い、ほんとに。もうしない」






藤ヶ谷ね。
同じクラスの、あの大人しそうなイケメンくんが。


面白い。



そして俺は泣きじゃくる女の子の頭をポンポンと撫でて、告げた。




「もうおしまい。ばいばい」





____





女の子たちに探りを入れると、どうやら藤ヶ谷は彼氏がいる女だけしか手を出さないらしい。それも本当に付き合っているときだけ。彼氏と別れたり、藤ヶ谷を優先し始めたらもう捨てられるとか、何とか。





「藤ヶ谷くんに抱かれたあとの子って、皆どこか壊れてくんだよね。」
「ふうん」






ベットに横たわりながら女の子の真っ白な背中を撫でると、くすぐったい、と顔をほころばせた。







「ヒトのモノなんて欲しいか？」
「…私は何となく分かるかな。人が食べてるものって美味しそうに見えるし、人が着てるものって可愛く見えるもん。」





そうじゃない？と顔を寄せて来たので、お望み通り軽く鼻にキスをすると、嬉しそうに笑った。



全く分からない。
自分で新しいモノを手にした方がずっと嬉しいし、自分だけのモノである方が自由に遊べて楽しくないだろうか。





「藤ヶ谷くんのこと、気になってるの？」
「ちょっとね」
「確か宏光と同じクラスだよね？」
「うん。でも、きっとあっちから来るから。仲良くなれそうな気がするんだよね」






その言葉通り、藤ヶ谷は、それから何日かして体育の時に話しかけてきた。藤ヶ谷は俺がこういう奴だと知ると、露骨に嫌な顔をした。


別に俺が不特定多数の女の子と関係をもっている事を公言することも、隠しているつもりもなかったが、俺の唯一の理解者が出来たようで、俺は少し嬉しくなった。

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