焦った顔が見たい ページ13
「♪〜♪〜」
鼻歌を口ずさみながら、購買で買ったサイダーを片手にいつものように屋上に辿り着くと、どうやら先客が居たらしい。
「え?ミツ?」
「…っ、びっくりした。玉森かよ」
肩をビク、と震わせたのはまさかのミツで。少し錆びれたベンチに座りながら俺を振り返った。
隣にあるもう1つのベンチに腰掛けながらミツを見ると、手元には飲みかけであろう缶コーヒーが握られていた。
まあ、そんなことはどうだって良いや。
プシュ、とプルタブを引っ張ってサイダーを飲んだ。
「んめぇー……はあー、疲れた」
「はあ?親父臭いなお前」
「別に良いじゃん。体育超疲れたんだからー」
「あー、さっきグラウンドで体育やってたもんな。
……てかお前、4限は?」
授業を堂々とサボる俺を咎めるように、ミツはこちらを軽く睨んだ。
「どうせ出たって寝ちゃうもん」
「はあー?後で怒られるの俺なんだからな」
「あはは、ごめんね」
「あははじゃねえし!」
今日は昼から白い月が鮮明に見える日だ。
俺のお気に入りのスポットに、別の存在が居るからだろうか。何故かいつもより明確な輪郭を持って縁取られているように見えた。
「でもミツだってサボってるじゃん」
「う……それを言われると痛い……」
「黙っててあげるから、ミツも内緒にしてて」
俺がふざけてそう言うと、分かったよ、と返ってきた言葉が予想外に力無いもので、何かあったのだろうかと少し気になってしまう。
少しウザいくらいに熱いのがミツなのに、一体どうしたんだろう。
「ミツなんかあったの?」
「ん?何で?」
「元気無いから」
「ふは。別に何でもねえよ」
んー、なんか面白くないな。
学年主任にでも怒られたんだろうか。
そう適当な予想を付けながら、冗談半分で俺は口を開いた。
「もしかして恋人と喧嘩でもしたのー?」
「……」
「え、……」
「……」
「図星?」
急に押し黙ったかと思うと、くるん、としたまん丸な瞳が段々と濡れてきて俺はさらに焦ってしまう。
ミツの座っていたベンチに移動すると、ペシペシ!と俺を叩いてきた。
「来んなバカ!」
「ちょっ、泣かないで!ごめん!」
「泣いてねえしっ!」
「わー、ごめん、ミツごめんねっ」
ぽろり、と一粒涙が落ちてしまえば、決壊したように泣き始めるミツに対して、差し出せるようなハンカチなんて俺はあいにく持ち合わせていなかった。
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魚(プロフ) - A.Fxxxさん» コメントありがとうございます!過去作品読み返していて、続編書きたいなあと思い立って高嶺の花シリーズ書かせて頂いたのですが、ご好評頂けて嬉しいです!ニカ玉カップルとダブルデート編くらいまでは書いていこうかと思いますので、また読んで頂ければ嬉しいです! (2019年4月13日 2時) (レス) id: cc0d16b1ad (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - yikumiさん» コメントありがとうございます!話数の関係で短くなってしまったんですが、このシリーズのカップル書いていてとても楽しいです笑 北山先輩は無自覚なんですがめっちゃモテる男の設定で、実は藤ヶ谷さんの方がヤキモチを妬いている…という設定で書いてあります笑 (2019年4月13日 2時) (レス) id: cc0d16b1ad (このIDを非表示/違反報告)
A.Fxxx(プロフ) - 魚さんこんばんは!いつも拝見してます。魚さんな北藤作品大好きです!高嶺の花シリーズはほんとうにいつもきゅんってします!いつもステキなお話ありがとうございます。 (2019年4月12日 23時) (レス) id: 7ceefe7785 (このIDを非表示/違反報告)
yikumi(プロフ) - 魚さん、今晩は。「元彼氏/高嶺の花」シリーズの藤北カップル素敵過ぎます。美人なのに北山さんの前では可愛くなる藤ヶ谷さん…、きゅんとしました。知らない間に人の心を掴んでいく北山さんは罪な男性だと思いました。素敵な作品を有難う御座います!! (2019年4月12日 21時) (レス) id: 36ae0e2f2c (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - 桜鈴さん» コメントありがとうございます!意外と好評頂けていたようで作者としても嬉しい限りです。゚(゚^ω^゚)゚。 個人的にはニカ玉カップルも誕生させたいなあ、と考えているので、また更新させて頂きたいと思います! (2019年4月11日 12時) (レス) id: cc0d16b1ad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:魚 | 作成日時:2019年3月17日 21時