1ヶ月桜魔皇国を旅した話三巻 (ページ30)

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桜魔皇国21日目【午後】ページ30

人気のない公園でぼーっとしていると、もう既に午後になっていた。
公園の時計を見ると2時になっていた。
「もうこんな…どこかで昼を…」
思い当たる店は、ひとつしか無かった。

最初に3人が案内してくれた喫茶店に行くことにした。
道ははっきりと覚えている。
記憶を頼りに、道を歩いた。
あっという間に店の前にたどり着いた。
ドアを開けて、店の中に足を踏み入れた。

いらっしゃいませと言われて、私は一人席に座った。
メニューというものを見て、私は適当に料理を選んだ。
料理を待っていると、店の方に料理を作りながら聞かれた。
「なにかお悩みですか？」
「え？」
「お節介かも知れませんが、何か浮かない顔をしているように見えまして」

「…失う事の辛さは、誰よりも分かっていたはずなんだ」
私は何故か、気持ちの内を明かした。
「でも、失い方が今までと違ったおかげで、感じたことの無い喪失感を感じた。今までは二度と会えない別れだけだったから、会えるのに二度と関わることの無い別れだから…」

「…ほぉ、中々難しいお悩みを」
「いや何、気にしないでくれ。これでも我ながら強くなったと思っているんだ。前の私なら、また前に進めなかった」
「今は進めているんですね？」
「あぁ、後悔はしていない。だから大丈夫だ、話を聞いてくれて感謝する」
「いえいえ、ほら、どうぞ。ナポリタンです」

「ありがとう…あのところで」
「どうしました？」
「このナポリタンとやら、どのように食べるんだ？箸を使って食べるのではないのか？」
「なんと…そのような質問初めてです。いいですか、この料理はこのフォークを…」

フォークの使い方を学びながら、料理を食べ終わる。
「ご馳走様、次は違うものも食べに来よう…いつになるかは分からんがな」
「ありがとうございました、またのお越しをお待ちしています」
私は軽く一礼して、店を出た。

店を出た瞬間、晴さんと藤士郎さんと景さんとバッタリ出会った。
「あ…あぁ、すまない。では」
私は足早にその場を去ろうとした。
すると、晴さんに止められしまった。
「ねぇ君！さっきの…」

君、という言葉に胸が少しだけ痛くなった。
しかしこれ以上ここにいてはいけない。
「すまない、急いでいるんだ。では」
私は晴さんの腕を無理にでも払って、足早に去って行った。
あの後の彼らの会話など、想像したくもなかった。
私はとにかく、もう出会わないようにしようとした。