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桜魔皇国20日目【夜】2 ページ26

「でも、どうして魎さんの身体に?それに大分前からいたように思えたんですけど」
「デウス・エクス・マキナに身体はない。故に想像は自由なんだよ。この世界のデウス・エクス・マキナの自分は、黒煙の魔として姿を与えられた」

「いつぐらいからいたんだ?」
「長尾景と同い年だぞ?」
「えぇ?!」
「主役が生まれたら、デウス・エクス・マキナも生まれるんだ」
「物語の収束の為にか?」
「そう言う事だ。『機械仕掛けの神』は物語の表裏表紙と思ってくれていい」

「ま、そういう訳だ。分かったか?主役の御三方」
と黒闇天が言っているのはわかっているのに、見た目が鳩のせいで若干違和感がある。
しかしそこはとにかく置いといて、3人は頷いた。
「あ、でも人間を嫌っていたのは?」

「自分は本当に人間が嫌いだが?本当に触れて欲しくない」
「あぁ…そうですか」
「甲斐田プレミしたな?」
「やっちゃったねー晴くん」
「うるさいな…」

「さてエクス、そろそろ旅人から出てくれないか?運命を元に戻すから、新しい身体も渡すから」
「いや、もう自分の存在消してくれ。必要無いだろう」
「良いのか?」
「あぁ、主役とも会えたしな。悲劇を乗り越えれることを祈ってる」

「そうか…甲斐田晴、やっていいぞ」
「は、はい…」
「甲斐田晴というのか、少しいいか?」
エクスは近づいて、晴に耳打ちをした。

「挫けそうになっても、絶対に諦めるなよ」
「え?」
「それだけだ。さぁ、祓魔してくれ」
「…分かりました」
晴は、吉祥天に教わった術を使う。

魎の身体から静かに魔は抜けて行って、本物の魎がそこに残った。
魎は数回瞬きをして、周囲を確認した後にふっと笑った。
「魎?大丈夫?」
「…晴さん。また私知れた、知らない私を」
「え?」
「私、皆の事が、この国がこんなにも大好きなんだな」

そう言う魎の表情は、今までに見た事無いほどに豊かで素晴らしいものだった。
デウス・エクス・マキナと何を話したのだろう。
誰もそれを聞くことは無かった。
「良いぞ黒闇天、元に戻して」
「…あぁ、早速やるぞ」

黒闇天は、吉祥天の隣で呪文を唱えた。
神社を中心に光が広がり、国全体が包まれた。
「本当に、直してるのか」
「あぁ、そうだ。景さん、藤士郎さん、晴さん。今までありがとう。誠に感謝を申し上げる」
と魎は深々と頭を下げた。

「な、何言ってんだ魎、これからも…いや、まさか」

「私に、素晴らしい世界を教えてくれてありがとう。応援しているからな」

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作者名:神里 | 作成日時:2022年3月23日 8時

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