私幽霊らしいです【wrwrd!】 (ページ10)

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８話ページ10

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貴「…………ディクリアね？」

ディ「………。」

透き通っていたお父様譲りの青い綺麗な瞳は、今はもう濁ってその輝きを封印してしまったようだ。
深い海のような神秘的な光を持っていつも私を見てくれたその目は、沢山のゴミが入り汚くなってしまった。

眉根を寄せ、目を見開き、底の見えないような目でこちらを睨むディクリアに、情けながらも恐怖という感情を抱かなかったといえば嘘になる。
小さくて華奢だった体も、今は痛々しく見えた。

だからこの言葉が余計に怖かった。

ディ「…お姉様！！」

………耳を疑った。目を見張った。
自分の頭はとうとうおかしくなったのかと目眩がしたような気もする。

私が捉えたディクリアの姿は、前と変わらず、無邪気にはしゃぎながら、嬉しさを抑えるように口角を控えめに上げて笑う姿。
その目はまるであの時に戻ったかのように、また神秘的な光を取り戻していた。

貴「…ディク」
ディ「また会えてよかった！嬉しいわお姉様！！」

嬉しい、嬉しいわ！
法悦の笑みを浮かべ、片手を頬に添えながら眉根を寄せるディクリア。
ディクリアじゃない。この子は、こんな、こんな子じゃない。

貴「……貴方、誰よ。」

ディ「…………は？」

背筋が凍った。筋肉がぎゅっと固まって、変なところをつりそうになった。

ディクリアの顔は元に戻り、今すぐにでも血に染まりそうな不機嫌そうな顔を浮かべる。
その恐ろしさと言ったら。まるで本当の幽霊のようだった。
いえ、本当に幽霊なのね。私たち。

でもまたころっと雰囲気が変わり、人間だった頃の顔に戻る。

ディ「やめてよお姉様！私は私よ？私以外の何者でもないよ！」

貴「……えぇ、そうね。…そうなのね。」

ディ「変なお姉様ー…。じゃあ私やることがあるから行くね！」

貴「………えぇ。」

可愛らしくふりふりと手を振ってくるりと向きを変え去っていくディクリア。

やることなんてないでしょう？貴方は本当のディクリアじゃないでしょう？
もう、あの頃のディクリアじゃないでしょう？貴方は、変わってしまったのでしょう？

わかってるわ。見えたもの、貴方が完全に向きを変える前。

またあの顔に戻ってたわね。
世界を憎むような、すべてを失ったような、血に染まりたくて染まりたくて仕方がないような、そんな恐ろしい顔よ。

…もう、貴方はディクリアじゃないわ。

貴方とはもう、会いたくない。

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