優しいかくれんぼ【短編集】

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定期的に現れていたアレは、もう姿を見せなくなった。
私はそれを喜ぶべきで。

けれど、隣にマナツがいなければ、素直に喜べるわけがなかった。


「もういいかい」


鬼は私で、かくれているのはマナツ。
いっそ鬼が彼なのなら良かったのに。
勝手にどこかに隠れてしまった彼を見つけるなんて、私にできるはずがなかった。


それにもう、多分彼は死んでいる。


終わらないかくれんぼ。
彼は死に際を私に見せたくなかったのだと思う。


どこまでも優しくて、残酷だ。


「……愛してる」


あなたのことを愛していました。


叶わないことだとわかっていても願ってしまう。
彼ならいつかひょっこりと顔を出すのではないかと思ってしまう。


結局告白しようがしまいが、私は彼に未練がたくさん残っていた。


「もうギブアップよ」


だから、はやくあんたから姿を見せなさい。


夏も終わりに近づいてきて、アスファルトから立ち上る熱気も少しはおさまってきた。
夏休みの終わりはすぐそこ。

最後に美しく命を散らそうと頑張る蝉の声が耳に痛かった。


彼と過ごした夏はもう二度と戻ってこない。


こんな夏休みは、最初で最後だ。


「もういいかい」


夏が来れば、私はきっと何度でもそう言うだろう。



「まーだだよ」





終

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