百戦百敗【青葉城西】

花巻貴大 ページ8

「A、花巻ならできるよって言って」


「はい？」


「いいから」


花巻貴大。


ちょっとお調子者のところもあるけれど、場の雰囲気を和ませてくれる。


人のフォローがとてもうまくて、コートの中の流れは彼がいてくれるからせき止められることがない。


どうしてだろう、なんか、元気がない。


「花巻ならできるよ。だって、花巻だもん」


「ははっ、ありがと。そうだよな、俺だしな」


いつもみたいに軽く笑うけれど、目元がしんどそうだった。


前々回から、あの日が近づけば近づくほどみんなの様子がおかしい。


どこか寂しそうで、けれど幸せそうで。


わけがわからない。


私のせいだろうか。


私が何度も繰り返すことで、彼らに何らかの負担をかけていたら。


そう思うと、途端怖くなる。


でも、やめようとしたって、どうしたって私は車に轢かれるし。


あれ？


私がやってること、もしかして間違ってる？


「A！俺、ローリング下手だから、ちょっと付き合って」


「あ、うん。わかった」


何度だって付き合うよ。


でも、でもね、花巻。


私、何度だってやり直すってことが、正解なのか分からなくなってきちゃった





「頭撫でて、頭」


「いきなり？」


「いいだろー、減るもんじゃないし」


風の当たるところで彼の髪を撫でると、少し冷たかった。


「俺、頑張るから」


「うん、頑張って」


言葉が続きそうだったけど、結局それだけだった。

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