百戦百敗【青葉城西】

話そう、みんなで ページ12

今回は松川が私と一緒にいる番だから、私と彼はずっと手をつないでいた。


部室の中で、輪になって。


はじめに口を開いたのは及川だった。


「A、お前は、自分が時間を巻き戻してると思ってるよね」


ここは驚くべきなんだろうけど、私はそんなに驚かなかった。


今から起こる全てのことを受け止めるつもりでいるから。


「うん。あのね、決まった日時に車に轢かれるの。そしたら一ヶ月前に戻るんだ」


岩泉が「違うんだ」と呟いた。


なにが、違う？


「巻き戻してたのは、俺たちなんだ」


ざっと血の気が引いた気がした。


いや、おかしい、だって、確かに私は車に轢かれて、そうしたら戻って


あれ、でも、私を轢いたのは私だった。


「1番初めの話。俺たちが烏野に負けて数日して、Aは交通事故で死んだ」


声をもらすかわりに、松川の手を強く握った。


「知ってる？うちの高校の屋上から時間を取り戻したい人の遺品を投げると、時間が巻き戻せるんだ」


「し、知らなかった…」


「みたいだね」


ポタポタと、静かに涙を流し始めた、花巻。


それにつられて、みんな泣き出した。


「お前が死ぬなんて、いやで、いやで。勝たなきゃって。俺たちが勝てば、Aは寝不足になんかならなかったんだって思ってさ」


けど、何度やっても勝てなかった


そう松川が呟いた。


みんなが、私のために。


私のために勝とうとして、私のために時間を巻き戻してくれたんだ。

最後は笑いたいから→←松川一静

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