前世なんて知ったこっちゃない【山崎退】

この関係をなんと呼ぼうか ページ32

あれから数週間



私は目の前にいる山崎退という男に、弱みを握られてしまった。

少し弱っていたとは言え、女々しいヒロインのような発言をしてしまった。
恥ずかしい、穴があったら入りたい。



嫌な夢を見たら俺の部屋に来ること。なんて随分子どもっぽいルールが作られたので、何回か部屋に向かったが、その度に私は睡眠グッズと共に山崎の隣で寝かされている。


嫌ならルールを守らなければ良い話なのだが、破ったら何してくるか分からない。


普段は隠してはいるが、銀ちゃんさんに負けず劣らずのドS野郎だ。
能ある鷹は爪を隠すというが、能ある人はSを隠すのかもしれない。

けれど実際それで熟睡しているのも事実。
寝心地も正直良い、しかし腹が立つので認めたくない。




「どうしたんです？こっち見て」

「何もない」



前世では見たことがなかった眼鏡姿が最近になった増えたので、物珍しさで見ていた。とか気持ち悪すぎて言えない。
というかこいつ目悪かったっけ




今日は12月25日、クリスマス
ここ最近連勤だったので運良く休みが貰えた。と言っていたが、今もこうして在宅ワークをしている。



いつ渡せばいいのかタイミングが掴めず、私は上着のポケットの中にあるプレゼントを握りしめていた。

前世の時はスタイリッシュに渡せてただろ。
何故こんなに小っ恥ずかしいんだ。まだ付き合ってないからなのか？



「今日の夜ご飯豪華にしちゃいますか、クリスマスですし」

「まぁ、年に1回だしな」



仕事を終えてパソコンを部屋に片付けに行ったので、扉の前で待ち伏せすることにした。

きっと私からプレゼントがあるだなんて夢にも思っていないだろうし、山崎が泣いて喜ぶのが目に浮かぶ

やっぱり決めゼリフは大切だと思うので、なんと言おうか考えていると扉がゆっくりと開いた。

やべ、まだ決めてないのになんて言おう。
なんて思っていると、視界の端っこに季節外れな桜色の包みが映った。




「それ、俺にですか?」


意外にこの沈黙を破ったのは山崎で、私が両手で持っているものを指さしている。

反射的に違うと否定しそうな言葉を引っ込めて、なんと言おうか言葉を探すが見つからない。
変に意識してしまうのはクリスマスのせいなのだろうか。


結局何も言葉が思いつかず、私は小さく頷くことしかできなかった。

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