ある種のギャップ 山崎side ページ31
山崎side
酷く魘されていたので無理やり起こしたが、夢と現実の区別がついていないようで
俺の言葉は届いておらず、ずっとうわ言を繰り返していた。
まるで息の仕方を忘れてしまったかのように喉元を押さえ、苦しんでいるAさんの手を握り落ち着けるように務めた。
こんな様子のAさんを見るのは初めてで、かと言って対処の仕方も知らなかったので、俺はただひたすら名前を呼び続けるしか出来なかった。
「Aさん、もう大丈夫ですよ。落ち着いてください」
息も整ってだんだん落ち着いてきたが、心配だったので暫く隣にいることにした。
それからどれくらい時間が経ったのか、沈黙を破ってきたのはAさんの方だった。
「どんな夢を見たとか聞かないの」
その言葉になんて返すべきか俺は凄く悩んだ。
寝言で大体検討はついているし、かと言って聞いたところでこの人が教えてくれる訳ない。
「アンタが喋りたいなら、聞きますよ」
俺は悩んだ末こう答えたが、少し上から目線な言い方な気がしてきた。
下僕のくせに偉そうに、とか昔のAさんは言うんだろうな。と思いつつ隣を見ると、無表情のまま俯くこの人が、何故だか小さく見えた。
泣かないんですか、と気がつけば俺はそう呟いていた。
苦しいなら泣いてしまえば少しは楽になるだろうに、この人のプライドなのか、はたまた泣くということを忘れてしまったのか。
ただの憶測でしかないが、前世以上に苦しそうなこの人を見ていると、こっちが泣きたくなる。
「泣いたら、弱くなる」
聞こえるか聞こえないかの声でこの人は言った。
たった一言、小さい本音であったが俺はそれが聞けたことが嬉しかった。
この人の涙の蛇口は硬く錆び付いて、開けようにも開けられないのだろう。
けれど、そのうち貯蔵に余裕もなくなって、破裂する日もそう遠くはない。
その日には隣で一緒にこの人の涙を、全ての感情を一緒に分かち合えたら、なんて思う。
「同居にルール作ってもいいですか?」
そう聞くと、この人は時間を置いて頷いた。
嫌な夢を見たら俺の部屋に来ること。なんて
子どもじみたルールだと思われるかもしれないが、この人にはそんな時間が必要なのだ。
この人が辛い時はそばにいたいという私欲が混ざっているのは秘密ということで
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二宮瑠夏(プロフ) - 面白いです!すっごい気になるので更新頑張ってください! (2022年4月7日 12時) (レス) @page41 id: 36dca4defb (このIDを非表示/違反報告)
甘みかん味(プロフ) - シディアさん» コメントありがとうございます!そんなこと言って頂けて幸いです!!是非推してあげてくださいーー! (2021年12月7日 17時) (レス) id: e647edf408 (このIDを非表示/違反報告)
シディア - 僕山崎と土方推しだけど夢主ちゃん推しに変わろうかな。山崎と夢主ちゃん尊すぎる。ダメだ。これは夢主ちゃん推すしかない。 (2021年12月3日 21時) (レス) @page40 id: 939d5c7779 (このIDを非表示/違反報告)
甘みかん味(プロフ) - りんこさん» 人間いつ死ぬかわからないですからね!!笑亀更新ですが頑張ります!! (2021年4月3日 17時) (レス) id: e647edf408 (このIDを非表示/違反報告)
りんこ(プロフ) - いつも拝見させていただいています。ええっ!主人公死んだよ!もしかしてもう終わり…っと思ったら現世に飛んでホッと一安心してました。何だかんだで子供な夢主とそれに優しく応える山崎が好きです。これからも楽しみにしてます! (2021年4月3日 17時) (レス) id: 5b2ad52f60 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:甘みかん味 | 作成日時:2021年4月3日 14時