前世なんて知ったこっちゃない【山崎退】

大学の一大イベントと言えばこれしか無いだろう ページ16

あれから数週間、山崎さんは無事退院し日常生活は普通に送れるようになっていた。


「Aさん、今度の土日どっちかご飯食べに行きません？」

洗濯物の間から顔を覗かせてそう言う山崎さんの顔を横目に、私はスマホを見て予定を確認する



「あ、土日文化祭だからどっちも空いてないや次の週なら...何その目は」

洗濯物を干し終わった山崎さんは何か言いたげな表情を浮かべており、暫く黙っていたかと思うと俺も行きたい。と少し控えめな声色でそう言った

「私出店あるんで勝手に回っててください」

「Aさん出店するんだ、見に行きますね」


なんとも言えないこのむず痒い会話に耐えられず、生返事をして自室に戻った


この奇妙なシェアハウスが始まり、早2ヶ月
程よい距離感を保っていると自分では思っていたが、最近山崎さんが距離を縮めに掛かっている気がする。


この間入院してからだと思う、明らかに距離が近くなっている。というか向こうが詰めに来てる




前世の私も、今の私も好き




いつか、優しい眼差しでそう言っていた山崎さんの姿を思い出して小っ恥ずかしくなる


何度か恋心を抱いてる、とアピールするような発言はあったが、かと言って告白をしてくる様子もない。
これが大人の余裕というものなのだろう


童顔だけど、あの人と一回り離れてるんだもんな。恋愛って何歳差までなら世間一般的に見て普通になるんだろうか、
とベッドの上で首を傾げながら色々考えるが、恋愛経験0のこの頭からいくら捻りだそうとしても何も出てこないことは分かりきっている。

というか今はそんな恋愛より就活だ。

パソコンを開き、企業の説明会サイトを一通り見ていくが、これといって興味のある企業がない。


この間、沖田さんが言っていた言葉が引っかかるが警察って柄でも無いし。生半可な気持ちで行ってもなぁ、と考えていると
画面の下に変な広告が浮かび上がってきた

挑戦者求む。という一文だけのシンプルな広告だ。興味本位でクリックすると、恐らく企業の説明会であることがわかった。

しかし企業名の公表は無し、ただそこに書かれていたのは今日の日付と、時間と場所だけで他は全て謎だった


会場はここから近いみたいだし行くだけ行ってみようかな。就活生なのに何もしてないってのもマズイし

そう思い、私は人生で初めてのスーツを着て、会場へと向かった

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