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「ご、ごめんね、山田!」
「……なんで大ちゃんが謝るの」
男たちが去った後の空気はなかなかに最悪だった。
大ちゃんは罰の悪そうな顔をしているし、俺も不機嫌なのが顔に出てしまっている。
「い、いやぁ〜、それにしてもカッコよかったなぁ山田。ああいう場でビシッと言えるとか凄いな」
空気を変えようとしてるのか、無理に明るくそう話しかけてくる。
「ビシッとなんて言えてなかったけどね。てか、あいつら自分で出しに行けばいいのに」
「多分、提出しに行く場所が場所が遠いから、面倒くさいんじゃないかな」
「はぁ? なにその理由。最悪だな。てかなんで大ちゃんも引き受けちゃうの?」
彼を責めても仕方のないことだとは分かってるけどついつい口にしてしまう。
「と、友達だからさ……」
笑いながら言う大ちゃんは少し痛々しかった。
「……あー、てかごめん。勝手に口挟んで」
大ちゃんの顔を見ていられなくて、俺はそっぽを向きながら謝る。
「え、ううん!全然!……むしろ俺、嬉しかった」
「……嬉しい?」
「うん、だって山田、俺のことを想って言ってくれたんだろ?」
「……別にそういうわけじゃない」
どこか照れくさそうに笑う大ちゃんの言葉に素直になれず、少し冷たく返した。
大ちゃんはそんな俺の返事を聞いて、
「山田はツンデレだなぁ〜」
なんて、によによとした変な顔で笑ってた。
その後の言葉はあまり耳に入ってこなかった。
大ちゃんは周りからどんな扱いを受けてるのかな、とか珍しく俺が他人のことで頭がいっぱいになってしまって。
でも小さく大ちゃんの口から「ありがと」って聞こえた気がした。
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作者名:はらぺこ | 作成日時:2023年3月12日 22時