* ページ9
・
「……あ?」
その言葉はボリュームこそ小さかったが、しっかりと耳に届いてしまったようだ。
自分でもどうしてこんな言葉が出てきたのか分からない。
他人のことなんてどうでもいいし、興味もない。
こんなたまたま出会っただけの先輩のことなら、なおさら。
なのにどうして。
「え、なに、こいつ誰?」
横からいきなり口を挟まれて、男は明らかに不機嫌そうに大ちゃんに問う。
「あ、や、えと……。た、たまたま隣に座ってた人!!」
「は?」
知らない人だと言われ、ついつい言ってしまう。
その俺の漏れた言葉を聞いた大ちゃんは、目線で「黙ってて!」と訴えているようだった。
大ちゃんなりに守ってくれてる……のか?
「と、とにかく出しに行けばいいんだよね?もう分かったからとっとと行って!」
「あ、急になんだよ……」
「まぁいいじゃん、課題出してくれるって言ってんだから」
急に大きなボリュームで喋った大ちゃんに面食らった様子の男と、それを宥める取り巻きの女の人。
課題だと思われるプリントを数枚大ちゃんに渡すと、男たちは去っていった。
・
131人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:はらぺこ | 作成日時:2023年3月12日 22時