ふたくちめ ページ6
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それから暫く経った日のこと。
今まで一度も利用したことがなかった大学の食堂を、せっかくならと訪れてみた。
メニューは豊富だし値段も学生に優しいし、なにより美味しそうだ。利用しない手はないだろう。
少しの時間考えたあと、俺は“オムライス”を頼むことにした。
席に座ってオムライスを堪能していると、突然隣から声をかけられた。
「山田!偶然だね、学食利用してたんだ!」
嫌な予感がする、
と思いながら声の方へ目を向けると、そこにはいつの日かに出会ったあの男がいた。
「……大ちゃん。偶然、だね」
遠慮がちにそう返した俺の隣の席に、大ちゃんは遠慮なく腰を掛ける。
「山田オムライスにしたのかぁ!オムライス、好きなの??」
「え、あ、うん、まぁ好きな方、かな?」
特別好物ではないけど“普通”と返すのも素っ気ない気がして、変な答え方をしてしまう。
「そっか!俺ね、オムライス大好きなの。美味しいよね!」
瞳をきらきらと輝かせながら俺に話しかけてくる。
「あー、うん、美味しい美味しい」
めんどくさいなと思いつつ笑って適当に返事する。
それなのに彼は変わらずの笑顔で俺にずっと話しかけてくる。
俺が会話に乗り気じゃない態度なのが伝わらないのだろうか。
「山田って、何学部??」
「……文学部」
「一緒か!なんか嬉しい!」
「一緒なんだ……。それにしては講義被らないね」
「ん〜、まぁ学年違うとなかなかなぁ」
「……え」
学年が違う……??
あ、俺年上だと思われてる?
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作者名:はらぺこ | 作成日時:2023年3月12日 22時