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一ヶ月くらい前、『お楽しみデー』という言葉が初めて俺のスケジュールアプリに登録された。
そしてそれ以降、毎週、いや、最近はほぼ毎日のように登録されているその言葉が余計に俺を変えた気がする。
ネーミングが小学生時代の給食のメニューなんかを思い起こさせるが、あながち間違いじゃない。
その日は俺と大ちゃんが一緒にお昼ごはんを食べる日。しかも俺の手作り弁当を。
友達のいない俺はあまり分かっていなかったが、普通は友達相手にお弁当なんて作らないらしい。
世間一般的には、そんな面倒なことは子供や恋人相手などにしかやらないのだとか。
でも俺は大ちゃんのためにお弁当を作ることに対して、面倒だと思ったことがない。
料理をするのは好きだし、なにより嬉しそうな顔で頬張る大ちゃんはとっても可愛い。
あの笑顔を見るためなら早起きだって、料理の勉強だって余裕でできちゃう。
でもふと考えてみた。もしそれが大ちゃんにじゃなくて、俺に別の友達がいたとして、そいつにだったらって。
多分、俺は凄く嫌がるだろうし、罰ゲームのように感じるだろう。
もし知念が相手だとしても、作りはするだろうけど、そのために料理の勉強まではしない気がする。
じゃあなんで俺、大ちゃんには……。
あ〜、ゔ〜……。なんか、もやもやする。
誰かになにかをしたいと思うのも、誰かのことをずっと考えてしまうのも初めてなんだ。
こんな感情、知らない。
「なんだよこのきもち…………っ、たぁ!!」
トントンと小さく振り落としていた包丁が指をかすり、じわぁ、と血が出てくる。
近頃ずっと俺のなかでくすぶり続けているこの気持ちの答えを考えていたら、ついついそのことに夢中になってしまっていたようで怪我をしてしまった。
「あぁ、もう、大ちゃんのせいだ!!」
もやもやと怪我の痛みをぶつけるように、ただ一人そう叫ぶ。
はぁ……。
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作者名:はらぺこ | 作成日時:2023年3月12日 22時