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いつくちめ ページ24







「涼介、また料理の腕上がった?」












「え、まじ?」




「うん、なんかそんな感じする」








俺の中学からの唯一の友達である知念にそう言われると、俺は手を上にあげ、喜びを表現した。





知念は中学の頃からよく俺の家に遊びに来ており、それは俺が大学生になって一人暮らしを始めた今も変わっていない。




彼が家に遊びに来るときは、夕飯を食べるまでがセットだ。


振る舞った手料理の回数は通算何度目になるか分からないけど、少なくとも1番俺の料理を食べているのは確かな知念が“上達した”というのだから、そりゃあガッツポーズもしたくなる。








「なに、なんかあったの?」




「えー、うーん……。最近料理本とか見るようになったからかなぁ?」




「料理本? 急にどうしたの」








そう聞かれ、俺はここ最近のお弁当作りを思い出しながら笑みを浮かべた。








「いや今俺さ、お弁当作ってて」




「お弁当?」




「うん」








頷くと、知念は不思議そうに首を傾げた。










「涼介って高校のときから自分で作ってなかった?」




「……うん、作ってたよ?」




「そうだよね……? じゃあどういう……」








あ、そっか、大ちゃんのこと、まだ話したことなかったか。








「えっと、お弁当作ってるっていうのは……と、友達……に作ってる、ん、だよね」








あらたまって“友達”というのが恥ずかしくて、その部分だけ変に尻すぼみな言葉になってしまった。










「え? なんて?」








俺が恥ずかしがったせいでもう一度言うはめに。










「と、友達!に、作ってるの!」




「……えぇ?」








知念は“信じられない”というように目を細め、軽く笑った。








「うっそだぁ!」




「いやいやほんとだって……」








素直には信じてくれない知念。





……たしかに、今までの俺だったら誰かのためにお弁当を作るなんてこと絶対にしなかった。

自分だって不思議に思う。

どうして大ちゃんには作りたいと思ったのか。





長いこと俺の唯一の友達をしてきた知念が疑うのは無理もないことなのかもな。








「……え、ほんとなの?」




「ほんとだって……」




「まじ、か……。へぇ、あ、そう……」








知念はゆっくりと言葉を飲み込むように頷きながら、やがて困ったように笑った。



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作者名:はらぺこ | 作成日時:2023年3月12日 22時

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