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「なぁてかさ、毎回気になってたんだけど山田のそのお弁当って誰が作ってるの?」
大ちゃんの視線は俺の膝に乗っている弁当箱へと向いている。
「自分で作ってるよ」
「山田が!?すげぇ〜……」
「大したことじゃないよ。それに、一限から講義入ってるときは学食利用したり外で食べたりして、楽してるしね」
「あ、だから前に学食いたんだ!ほ〜、じゃあやっぱそう考えると本当、運命というか……」
「運命っていうか、まぁ、オムライスは大ちゃんを呼ぶアイテムだから」
「え、なに、なんて?」
「んーん、なんでもなぁい」
ほんの少し顔を大ちゃんの前に近づけてそう言うと、大ちゃんは「なんだよぉ」って顔を膨らませた。
「あ〜、俺も弁当作ってみよっかなぁ」
「料理出来るの?」
「え、出来ないよ?」
「出来ないんかい」
軽くツッコんだあと、「どうして?」と聞いてみる。
「いやぁ、俺、いつもコンビニでお昼買ってるんだけど、出費が凄いから……。
お弁当作ったほうが抑えられるかなーって」
「……なら、俺が作ってあげよっか?」
「え!?いいの!?」
周囲の人が振り向くほどの大きな声で、驚く大ちゃん。
「そ、そんなに驚く?」
「いや、だって俺、人にそんなこと言ってもらえたの初めてで……」
「初めて……」
「あ、や、伊野ちゃんとかは何度か色々言ってくれてたけど……」
大ちゃんは嬉しそうに口元を緩め、顔を俯かせた。
……うわ、なんだろ、すごく、抱きしめたい。
理由なんてないけど、なんとなく。
そして、
大ちゃんのためになにかしたい、そう思った。
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作者名:はらぺこ | 作成日時:2023年3月12日 22時