＊ ページ16
・
彼は大ちゃんの友達ということだし、見た目も大人っぽい雰囲気はあるしで年上だということが窺える。
「あ、俺ちょっとトイレいってくる！ごめんね！」
伊野ちゃんとやらを紹介し終えると、大ちゃんは慌ただしく席を立ってトイレへと向かってしまった。
生理現象に文句は言えないけど、このタイミングで二人きりにするのはやめてほしいものだ。
「あ、あー、伊野尾さん……も、座ります？」
無言が居た堪れなくて、とりあえず立ったままの彼に座るよう促す。
「じゃあ遠慮なく」
伊野尾さんは大ちゃんが座っていた場所に座ると、接客をしていた時とは違う、そして大ちゃんがいたときのふわふわとした雰囲気とも違う、冷たい空気を纏っている気がした。
「山田、だっけ。大ちゃんとはどこで友達になったの？」
「え、と、大学ですかね。たまたま会って……」
「ふぅん。結構仲良いの？」
「いや、どうでしょうか。まだ数回話したことがあるくらいなので」
目の前の人がなぜだか怖く思えて、間違えた発言をしないようにと心がける。
「大ちゃんの良いところ。どこだと思う？」
「え、良いところ、ですか……」
「うん」
急な質問に少しうろたえる。
良いところを答えろなんて言われても、まだそんなに知らないし……。
「ひ、人思いなところですかね」
「人思い……」
「誰にでも笑顔だし、人を庇うし、優しいし……」
俺の知る限りの大ちゃんを思い描きながら話す。
そして、先日のことを思い出す。
「でも、それは、大ちゃんの良いところでもあり悪いところでもあるので……」
と、ここで聞いていた伊野尾さんがぴくっと反応する。
「悪いところでもあるってのは？」
「あ、や、良いことですよ！良いことなんですけど……優しすぎてつらい思いしてそうだな、って……」
うっわー、俺何言ってんだろ。
何お前がわかった気になってんだ、って話だよな。
ちょっと勝手なこと言い過ぎたぁぁぁ！！
失言だったかな、そう思ってちらっと彼を見ると、少し嬉しそうに笑っていた。
「そっかぁ…。じゃあ、最後に」
真剣な眼差しを向けてくるので、思わずこちらも身構える。
「大ちゃんのこと利用しようとしてないよね？」
「……は？」
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 131人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はらぺこ | 作成日時：2023年3月12日 22時
