呪術高専の教師になったお話 (ページ8)

今日:4 hit、昨日:1 hit、合計:7,668 hit

5. 居場所ページ8

『あー、終わんない』

いくら人数の少ない学校とはいえ、一般授業を何個も担当するのはなかなか大変だ。

新任が所以に何もかも手探り状態。

初めは先代のおじいちゃん先生にサポートに着いて頂いて手伝ってもらった期間もあったが、今は独り立ちして私だけだ。

呪術についての座学や、
呪霊を祓う為の術式練習体術訓練。

それが主な学ぶべき物になる呪術高専の生徒にとって、一般授業の内容が苦手な子も居る。

最近は特に成績の伸びに悩んでいるのだ。

何教科も1人で担当すれば
提出されるプリントも多いわけで。

職員室の私の机には、
まぁまぁな量のプリントが積み上がる。

それを、座学授業が入っていない隙に一気に確認、採点をする。

後で明日の分のプリントも作らないと。

作業にまだ慣れず、正直頭がおかしくなりそうだ。

「大丈夫かい？不安なうなり声が廊下まで響いていたよ」

ただ1人だった職員室に、彼がやってきて私に話しかけた。

黒く長い髪を軽く掬って結っていて、顔の前に垂れる前髪が特徴的。

夏油傑さんだ。

彼は体術訓練をしたり、術式である呪霊を操りそれを生徒の練習として扱われる。

五条さんと同期の呪術の方の教師だ。

『大丈夫だと思いたいです』

夏「君ならやれるさ、頑張れ」

私の言葉に笑いながらも元気づけてくれ、彼は近くの席のイスを借りて隣に座った。

『はい、頑張ります…』

夏「相変わらず丁寧な作業をするね。コメントまで書いて」

『少しでも生徒とコミュニュケーションを取りたいので。一般の勉強も頑張ってくれたら嬉しいなとも』

夏「良い心がけだと思うよ。良ければまた、採点だけ私が手伝おうかい？」

夏油さんの提案にぱっと気分が明るくなる。

『いいんですか？お願いしたいです』

縋るような思いで返せば、
彼はにっこりと微笑んでくれた。

プリントの解答データを渡せば、彼は自身の荷物から赤ペンを取り出して採点を始めてくれた。

心強い。作業効率が2倍だ。

私は、彼が採点をしてくれたプリントを見て、生徒へコメントを書く。

時折、解答が分からない問題を明らかなギャグに走り面白い答えを書く生徒もいて。

夏油さんが私の肩をトントンと突き、プリントを見せてくれれば2人で笑い合う。

生徒の正答率が上がれば凄く嬉しい気持ちになるし、やりがいがある仕事だと感じている。

教壇という居場所を与えてくれた事に改めて感謝を感じたのだった。