続 ページ5
続
五「うっわ、やっぱ気色わる」
『酷いなー。君はとっくに見えてたくせに』
古典的に、日本人の瞳は真っ黒だと言われる。だが実際には黒に近いだけ。角膜は茶色である。
でも私は違う。古典的な 真っ黒 ではなく、
本当の 真っ黒。
左側の目だけ、気持ちの悪いほどの色を吸収して反射しない。瞳孔と角膜の違いも、虹彩も分からないほどの
真っ黒。
パッと見は普通の目と何ら変わりなさそうにも思える。
だが、見た人は反射的にギョッとする。
呪い が滲み出ているのだろうか。彼の言う通り、それは気色わるいものだ。
五「確か、それも呪いの影響か。つーかA家についての書物がどこにもねぇし、どうなってんだよ」
『多くは残されてないだろうね。呪術界の汚点とか何とか。上層部の方に1部と、あとは私の家だけかな。…なーに、私の事調べてたの?』
最後にからかうような言葉をつければ、彼は分かりやすく否定して悪態をついた。
呪い。
数年前、私はA家の当主となり、受け継いだ。
父の体を蝕んだヤツを、呪いを。私は受け継いだ。
その時から、私の首には封印の力を持つ呪具が着いている。簡単に言ってしまえば、金属の輪っかみたいな。
ヤツが私の中に封印され、私の体を蝕んでいる。祓う方法も見つからないようで、私の家系は いわば生贄だ。
父はいつも笑っている人だった。
クシャッと目をつぶるように微笑んでいた。その理由を理解したのは、一人娘の私が当主となった時。
ヤツに蝕まれ、父が衰弱し他界。
私が受け継いだことで、すぐに私の左目の色が変わった。それは呪いが私の中に健在している証拠。見た人が反射的に気味悪がるような。
何時ぞやか夏油くんが見せてくれた、呪い玉のような。
真っ黒に染まった。
いつか右目さえも、色が変わってしまうだろう。髪色も、私の中の呪いに引っ張られて染まってくる。
間際の父がそうだったのだから。
でも、私の代で終わらせてみせる。なんとしてでも祓い方を見つけて、終わらせる。
昔は、呪術師として大きな力を持ち貢献していた家系のひとつだった我が家も、今や腫れものとして扱われる。
昔家に仕えていた物達も、使用人たちもみんな知らないふりをして我が家を去った。
そしてこの血を受け継ぐものは、この世で私だけ。
誰も手を差し伸べてはくれない。でもやり遂げてみせる。呪いとともに消えることを。
私は改めて、そう心に決めた。
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作者名:あまね | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/easye1/
作成日時:2023年9月9日 21時