○44 ページ45
・
・
「一緒に旅に出よう、ジュリアス!」
どこかで聞き覚えのある声が聞こえる。気になって足を止めれば、チェリーピンクのふわふわとした髪の毛が目に入った。あの後ろ姿、見たことあるな。
『……咲也くん?』
「? あ!Aさん!」
こんにちはっ!と、相変わらずお日様みたいな笑顔を見せてくれた咲也くんに、吊られて笑顔になる。やっぱポメラニアンみたいで可愛い。
「お仕事帰りですか?」
『うん。…咲也くんは、何をしてたの?』
「バイト帰りに発声練習してました。」
『そうなんだ。でも、寮はここから遠いよね?』
「バイト先がこの近くなんです!Aさんは、ここからお家近いんですか?」
『ううん、私は今から駅に向かうところ。』
「そうなんですね!お仕事お疲れ様ですっ!」
ま、眩しい…………。初めて彼を見た時からずっと思ってたけど、本当に純粋で無垢な笑顔だ。私みたいな大人には眩しすぎるし、何より溶けてしまいそうだ……
いいな、こんな子が家にいたら、私仕事頑張れそうだもん。じーん、と暖かくなる胸を押さえていたら、何か思いついた咲也くんが再び、ぱあっと表情を明るくさせた。
「よかったら、夕飯食べに来ませんか?」
『えっ、今から!?』
「はい!ちょうどいい時間ですし、寮の夕飯も今頃出来上がると思うんです!俺、カントクに聞いてみますね!」
『え、ちょっ、ちょっと!?』
私が言葉を発する前に、咲也くんはスマホで監督さんに連絡をしてしまった。「もしもし!オレです!咲也です!」だなんて、律儀で可愛いなぁ。………じゃなくて!
「はいっ!じゃあ、今からAさんと帰ります!」
『……………』
「監督も、ぜひって言ってました!」
『で、でも…悪いよ……この前もお世話になったばっかりだし……』
「Aさん、カレーは嫌いですか…?」
『カレー!?嫌いじゃないけど…なんで急に…』
「よかったです!今日は夕飯、カレーみたいです!」
『話が噛み合わない!!!!!』
ハテナを浮かべた咲也くんに、もういいや…と結局私が折れて、咲也くんと共に茅ヶ崎さんと卯木さんもいるであろう寮へ向かうことになった。
・
・
234人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:しあ | 作成日時:2019年6月27日 22時